大林宣彦監督の映画「ねらわれた学園」(1981年)を観て、改めてガクッとこけたハナシ。 [映画]

2020年5月17日。

先月10日、映画監督の大林宣彦さんが82歳で亡くなりました。

思えば、1970年代半ば、ワタクシが中学3年生か高校1年生のときに、監督の(たぶん)長編第一作「HOUSE」が劇場公開されました。主演は池上季実子さん、大場久美子さん。ワタクシと同世代のバカ(?)は同じと思いますが(と決めつけちゃいけないね)、若い女の子が家に食われるつう、すいたらしいストーリーと、「ちらっと某女優さんの乳首がみえる」というガセ情報?に踊らされ、行きましたねえ、地元札幌の映画館へ。

そして「HOUSE」の本編を目の当たりにし、あまりのスットコドッコイな内容に椅子から転げ落ちるくらいマイナス感動してしまいました。

チケット代を無駄にしたことを認めたくないがゆえ、「HOUSE」は映画、ではなく、脱力狙いのネタ、だと位置づけ、乳首は見えなかったけど、アリじゃん!と強引に納得。そして大林監督、恐るべし!うーん、マンダム、、、とチャールズ・ブロンソンの無表情をまねたのであります(このつながりの分かる人もいないか・・・)。

さて、それから40年以上の歳月を経た今年4月。大林宣彦監督の追悼企画として、4月19日、BS朝日で、あの映画が放映されたのであります。

ねらわれた学園(1981年)。主演は当時、飛ぶ鳥落とす勢いの薬師丸ひろ子さん。公開時にもちろんワタクシは劇場で拝見しております。

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♪ はじめて言葉を~交わした日の~その瞳を忘れないで~♪ 

・・・おっとユーミンの歌う主題歌「守ってあげたい」を思い出している場合ではない。そう、映画「ねらわれた学園」であります。

ひええ~とワタクシは声が出ましたね。

数々の賞を獲った一応は、スゴイ映画監督(ということになっている)方の、追悼企画に、

ねらわれた学園、を出しちゃダメでしょう!

なぜなら、前述の「HOUSE」もヒドイけど、「ねらわれた学園」も劣らずヒドイからです。「漂流教室」ほどではない、というのが唯一の救い・・・って、どんな低レベルだよ。ちなみに、大林監督が名匠として世間から持ち上げられ、重鎮扱いされていた理由が、私にはサッパリわからんのですがね。おっと大林ファンの方、失礼。

ハナシを戻します。追悼企画に「ねらわれた学園」をぶつけたテレビ局の行為には、悪意さえ感じますな。他に出せるネタが無かったのか・・・。前出「HOUSE」なら、監督第一作目と割り引いてなんとか許せても、「ねらわれた学園」はいけません。高柳良一さんは、いったいどう思うでしょうか!?

ワタクシの本作批判に対して、こんな反論もあるでしょう。あの映画は確かにハチャメチャだが、当時の日本映画はあんなもんだったよ。それに大林監督だけが悪いわけではない。製作は角川事務所ですよ、薬師丸ひろ子さんを前面に出すアイドル映画なのよ。「ゴッドファーザー」とか「フレンチ・コネクション」みたいなアカデミー賞作品じゃないんだから、そう、目くじら立てずにさあ・・・。

いや、私だってバカじゃない。そんな名作と同じ土俵で比較するつもりはないです。ただ、まともな人間は「ねらわれた学園」を観たら恥ずかしさに身悶えするのが普通でしょうよ?と言いたいわけです。

宇宙人が地球侵略の端緒として、ある高校(の生徒たち)を狙う、というヘンテコ設定は認めましょう。その企みを阻止する超能力少女(主人公)が薬師丸ひろ子さんなのも認めましょう。しかし、ですよ。

宇宙人である峰岸徹さんのお姿が、裸の上半身にマント、下半身はタイツ、という即、警察に通報される変態ビジュアルとはナンだ。さらに、峰岸さんのおなかに、目の形の落書き(?)が書かれているんですな。露出魔として警察に逮捕されたとき、「へそ踊りの練習をしていた」と言い訳するためのギミックでしょうか。

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ラストシーンは、宇宙人(だと言い張る峰岸さん)と、薬師丸ひろ子さんの時空を超えた(?)空中戦で、さしたるバトルが繰り広げられるわけでもなく、あっけなく、峰岸宇宙人の負け確定。さんざん話を引っ張って、なんじゃこりゃ。肩透かしにもほどがあるぞ・・・。

あまつさえ、平和が戻った夜空に、峰岸宇宙人の顔が浮かびあがり、ニヤリとウィンクするシーンに至っては、

狂気の沙汰

としか思えません。仮に、プロデューサーの角川春樹さんから圧力があったとしても、この演出をやらかした大林監督、

よほど体調が悪かったか、前日の酒の飲み過ぎ、

だったのでしょう。

と、すっかり大林宣彦監督をバカにする雰囲気になりましたが、こんな監督にも、実は素晴らしい映画は(少ないですが)存在するのです。中途半端な青春モノ(と私が思う)尾道三部作に比べ、はるかに完成度が高く、なんたって、片岡鶴太郎さん、秋吉久美子さん、風間杜夫さんの芝居が良い!

「異人たちとの夏」(1988年)であります。

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出来心から間違って「ねらわれた学園」を観てしまい、日本に、映画に、人生に絶望した方は、口直しではないですが、ぜひ「異人たちとの夏」を観てくださいっ!

と、最後は、大林宣彦監督を高評価(?)したところで本日はお終いっ。

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