「ブダペスト展」を、乃木坂の国立新美術館で拝見したハナシ。 [絵画]

2020年1月某日。前回記事(アップは1週間以上も前ですが)の続きであります。

晴天平日、会社を午後半休して、個人的興味の発露により、渋谷中央街を探索したワタクシ。探索は午後2時に完了。道玄坂の空に、お天道様はサンサンと輝いています。酒を呑むにはちょっと早いなあ~さて、どうする?と考えたワタクシが向かったのは、地下鉄千代田線の

乃木坂

であります。乃木坂といっても、その名を冠したアイドルグループに興味があるわけではなく(生田絵梨花さんは良いと思うが)、ワタクシの目的地は国立新美術館であります。

過去何度か、日比谷線の六本木駅で下車し、そのたび「乃木坂駅のほうが、全然近いやんけ!」と自分にツッコみを入れてきた由。今回は同じ轍を踏むことなく、しっかり乃木坂駅で下車だぜえ。小さく満足、ププッ。

さて、国立新美術館に来た目的は、開催中のこの展覧会を観るためです。

ブダペスト展、です。2020年3月16日まで開催中。

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ブダペストといえばハンガリーの首都ですね。展覧会サブタイトル「ヨーロッパとハンガリーの美術400年」が示すように、ハンガリーの国立美術館が所蔵するお宝絵画が、どどーんと日本にやってきたらしい。

どれどれ、さっそく入場してみましょう。お、それほど客が多くない。要する空いている!ゴッホ展だのムンク展つうとバーゲンセール並みの大量・老若男女がひしめく日本の展覧会会場において、都心でこれだけ空いていると、もうその事実だけで嬉しいです。いや、こんなことに喜んでいて、どうする。オレは絵を観に来たのだった。

入場早々に目に入るのは、一目見て、クラナハ、と特定できる人物表現とタッチ・・・。当時好まれた寓意的題材、不釣り合いなカップル(好色な金持ち老人と、老人の財産を狙う若い女)を描いた作品ですね。

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私が、最後にクラナハの実物を観たのは、前世紀(といっても25年くらい前)のウィーンでしたので、ちょっと懐かしい気持ちにはなりました、以上。

うは、こちらは16世紀ヴェネティアで活躍した巨匠、ティツアーノですなあ。聖母の左におるのは聖パウロだという。この方、もともとはキリストを迫害する体制側の軍隊隊長でしたが、あるとき天からの光(啓示?)を受けて落馬し、以来、キリスト信奉者になった波乱万丈人生のお方です。こんな知ったかぶり知識を披露したのは、このハナシ、後につながるからですね、フフフのフ。

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さて、たくさんの作品をサクサクと拝見し、時代はいよいよ19世紀へ・・・ということで、ここからは、ハンガリーの画家たちのお宝作品が登場ですね~。正直、クラナハやゴヤ、エル・グレコよりも、そっちを観たいワタクシであります。

ドーン。ハンガリー19世紀の風景画といえば、マルコー・カーロイ先生であります。画面中央の輝く光!なんと美しいのだ!

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印象派だの立体派だのを知って、変に耳年増(眼年増というべきかな)になった日本人は、こーゆー絵をみるとすぐに「古くさい」「写真でいいじゃん」などと酷評するのだが、あなたね、ほんとうに自分の目で観て自分の頭で考えているのか?と申し上げたいです。美しいもの(風景)を、その美しさを誰もが分かる形でキャンバスに描こう、あまつさえ実物以上の美しさに仕上げたい、という高邁なる試みを、どうしてお前ごときが・・・と、あまり怒ってはいけませんナ。

こちらは、ムンカーチ・ミカーイによる肖像画。音楽好きならすぐにお判りでしょう。描かれているのは、作曲家でピアノの名手だったフランツ・リスト御大であります。

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この絵が描かれた4か月後にリストは亡くなっているそうで、まさに晩年の大音楽家の堂々たるただずまい、といったところでしょう。絵がけっこう大きいので威圧感もありましたね。

さて。

ついに、ワタクシが求める画家に辿り着きました。

チョントヴァ―リ・コステカ・ティヴァダル(←なんちゅうヤヤコシイ名前じゃ!)によるアテネの夜の風景を描いた作品です。ドーン。

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いや、これがどうした?と思うかもしれませんが、なんというか、変な雰囲気を感じませんか。これまで掲げた絵にくらべると、やけにシロウトっぽいというか・・・。

ちなみにハンガリーは、日本と同じく苗字が先、名前が後、に表記されるので、苗字がチョントヴァ―リとなりますね。作曲家バルトークは、バルトーク・ベラ、ですね。

さて、このチョントヴァ―リ(1853年~1919年)という方。もともとは薬剤師だか薬局の方なんです。美術になんの関りもないヒトでした。で、彼が27歳のとき、なんと、天からの啓示を受けるんですね。神(?)いわく「お前はラファエロを超える、偉大な画家になるぞよ」と・・・。落馬こそしませんでしたが、前述した聖パウロのようではありませんか!(話がつながった。パチパチ)

そこでチョントヴァ―リさん、薬のシゴトは放り出し、今日からオレ画家だもんね、ランニングに短パンで放浪旅に出るもんね・・・とはせず、生来実直な方のようで、40歳まで堅気に働いてお金をためて、そこから華麗に(?)画家へと転身したのです。美術学校で勉強したり(やっぱり実直だ)、その後20数年にわたり、不思議ちゃんな絵を量産したのであります。

興味のある方は、ネットの画像検索でチェックしてみてください。ちいさく感動?できるかもしれません。

私は、アウトサイダー・アートの流れでチョントヴァ―リさんを知り、いつかは実物を観たいと思っていたのです。つうわけで、新国立美術館でも彼の絵(たった1枚しかない、ケチ!)をジーッと凝視していた次第。

幻想的というか、プチ、シュールが入ったというか、なんとも言えない奇妙な味わいです。テクニックの拙さゆえか、あるいは狙ってやっているのかも分からない中途半端な空のグラデーション・・・。朝か夜かも判然としませんが、マグリッドの絵のような仕掛けという訳でも無し・・・。そうそう、馬の脚をみてくださいよ。お盆に茄子でつくる馬の、割りばしの脚のようでしょう。

うはあ、ツッコミどころ満載、完全に私のツボにはまりました。

ハナシは長くなりますが、マッジ・ギル、アドルフ・ヴェルフリ、セラフィーヌ・ルイ、といった病んでる系ぶっ飛びシロウトアートの人たちって、画面を埋め尽くそうと、変質狂的に細かく書き込みますよね。チョントヴァ―リさんは、さすが薬屋さんだけあって(?)その類ではなく、幻視系とでも言いましょうか、クービンやゾンネンシュターンのノリですね・・・と、知ったかぶりを始めると、割りばしの馬脚があらわれるのでやめておこう。

いやあ国立新美術館「ブダペスト展」、私なりに大いに楽しみました。ありがとうございます。

ここでハナシの蒸し返しになりますが、天からの啓示、をテーマにした物凄い映画を紹介します。ビル・パクストン(主演・監督)でタイトルは「フレイルティー 妄執(もうしゅう)」であります。神の啓示を受けた農夫が、とんでもないラジカルな行動に出るサスペンス・ホラーです。だまされたと思って、ぜひ一見を。ワタクシは映画館(今は無き銀座シネパトス)で本作を観終わったとき呆然自失でした。いやはや、啓示というのは一歩間違えると大惨事ですね。マカロニ刑事。ジーパン刑事。「なんじゃこりゃーー」・・・失礼しました。

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