2023年で一番感動した映画「マエストロ その音楽と愛と」。天才指揮者レナード・バーンスタインの人生に迫る力作。 [映画]

2023年12月30日。

TVや雑誌で「今年の10大ニュース」「今年1番の〇〇」といった年末企画が登場するなか、ワタクシもチョイ便乗して、このテーマでワタクシなりのベスト1を申し上げたい!ずばり、

今年観た映画のなかで、一番感動した作品、であります。2023年に私が観た新作は約80本。公開総数の1/5にも満たないでしょうが、評論家じゃないので、その点は良しとしましょう。

予想外に(というと失礼ですが)「ゴジラ -1.0」が面白くってビックリ&感激しましたなあ。しかし、感動という観点ではこれ一択であります。12月8日に劇場公開、現在、NETFLIXで配信中の、

「マエストロ その音楽と愛と」 (2023年、米)であります。

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アメリカの天才指揮者レナード・バーンスタインさん(1922~1990)の、1943年の衝撃デビューから晩年までを、妻フェリシアさんとの結婚生活を軸に描いた作品。バーンスタインさんを演じるのは、クリント・イーストウッド監督作でもおなじみのブラッドリー・クーパーさん。いやあ、カッコいいんだよね~~。

で、なんと、クーパーさん、本作で監督・主演・共同脚本・共同製作の四役をこなす超人ぶりであります。イーストウッド御大の薫陶を受けた漢(おとこ)だけありますな。「イエスマン」でジム・キャリーとからんでいた過去も、今となっては昔・・・かあ。

さて、ワタクシ、クラシック音楽好きでLPレコード時代からバーンスタインさんには思い入れがあり、とくに彼が指揮するマーラー作品にガキの頃からドップリはまっていました。1960年代から70年代のニューヨークフィルとの全集、1970年代以降のウィーンフィルほか複数オケとの全集、どちらも素晴らしいと思う由。全集扱いじゃないけどウィーンフィルとの「Das Lied von der Erde」(大地の歌)なんてフィシャー・ディスカウさんの熱唱もあって超・名盤ですぜ、ホント。それと、1979年にベルリン・フィルと録音した交響曲9番かな~~あれえ、映画の話から外れてましたね、すいません・・・。

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思い入れのある偉人がテーマゆえ、こちらの映画を観る目も当然、厳しめになります。が「マエストロ その音楽と愛と」はワタクシのココロをガーンと撃ち抜く名作に仕上がっていたのでした。いやはや、驚いたわ、つうか、すごいわ、ブラッドリー・クーパーさんの才能!

この作品、マエストロ・バーンスタインの音楽偉業を並べ立てるのではなく、主眼は、あくまで妻フェリシアさんとの関係なんです。きれいごとラブロマンスではなく、奔放で同性愛傾向をもつ夫に対する妻の愛憎、反発、決裂、それを乗り越えての和解と許し、というドラマが見事に描かれておるのです。

主役を演じるクーパーさんの憑依的熱演もさることながら、女優キャリー・マリガンさんがほぼ出ずっぱりで知的でチャーミングで思慮深い妻フェリシアさんを演じきっております。こりゃあ来年のアカデミー賞で、主演男優賞&主演女優賞のダブルゲットも夢じゃないかも!?

ちなみにフェリシアさんは歌手として活躍された方で、1978年に56歳の若さで亡くなっておられます。その美貌は、彼女を演じたキャリー・マリガンさんに勝るとも劣りません。バーンスタインさん指揮のモーツアルト「レクイエム」のアルバムジャケットは、ジャンヌダルクに扮したフェリシアさんのフォトであります。

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とまあ話があっちこっち飛んですいませんが、年末だし、言いたいことは言います。本作のみどころのひとつはブラッドリー・クーパーさんに施された特殊メイクでしょう。米アカデミー賞2回受賞、日本が世界にほこるメークアップ・アーチスト、カズ・ヒロ(辻一弘)さんによる、70歳のバーンスタインさんの再現メイクは尋常じゃございません。似ているどころか冗談抜きでワタクシ「え?本人?」と思っちゃったもん。サイト掲載のショット(下)は、もはや、バーンスタインさんご本人か、クーパーさんが演じるバーンスタインさんか判別ができません~~。

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カズ・ヒロさん、さすがです。「ルーパー」の特殊メイクといい、「シェイプ・オブ・ウォーター」の半魚人の眼といい・・・って、マニアックな受けを狙うなよっ!とノリツッコミ。

さて、以上が前置きです・・・って、前置き長っ!

ネット映画評を観るともなしに観ると、本作、ひじょうに評価が高く、私も嬉しいわけですが、なぜか、ハイライトと言うべき名場面が、映画評でスルーされているのです。エラソーな言いかたでナンですが、評者やライターはクラシック音楽にはそれほど詳しくないのでしょう。

そう、マエストロ・バーンスタインに思い入れがあるなら、このシーンに食いつくこと、必至!

御大が、マーラーの交響曲第2番「復活」を、ロンドンのイーリー大聖堂で演奏したライブ(1973年)、その第5楽章の感動フィナーレを完全再現しているのであります!オケを振るのはもちろん、バーンスタインさんを演じるブラッドリー・クーパーさん。指揮っぷりが安っぽい形態模写でなく、ご本人が降臨!つうハイレベルですぜ、レニーが乗り移ったんですぜ。「トーク・トゥ・ミー」の左手ですぜ!・・・と、ややこしいボケですいません。

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指揮の最中、胸の前で両手を握りしめる所作、指揮台のうえでピョンと飛び跳ねる様子、両手を震わせながら大きく広げるポーズ、もうたまらんです。このシーンは、破滅的喧嘩をしたバーンスタイン夫妻が、和解へ向かうきっかけとなる重要なシークエンスです。慧眼と思うのは、ずばり、マーラーの「復活」を選曲したことでしょう。

本ブログで再三申し上げるとおり、この楽曲には聴いた人の人生を変える何かがあるのです(断言)。楽曲のもつパワーが、バーンスタインさんのエネルギーで増幅し、とてつもないデーモニッシュな音楽世界が展開するわけです。いやあ、辛抱たまらんね~。

そういえば当ブログ、2021年6月に、バーンスタインさん指揮マーラー交響曲2番「復活」のディスクを熱~く語っていました。奇特な方はぜひご一読下さいまし(その記事は→こちら)。

というわけで、2023年に観たなかで最も感動した映画について長々と書かせていただきました。

映画のサウンドトラックがクラシック音楽の名門レーベル、ドイツグラムフォンから発売されております。買おうかな~~どしようかな~、とちょいと悩んでいる次第。

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5月に公開された、女性指揮者ターの転落を描く映画「TAR」(ケイト・ブランシェットさんが怪演)も、同じドイツグラムフォンからサウンドトラックがリリースされています。この映画のキーとなる曲は、マーラーの交響曲第5番でしたね。マーラー作品、大人気じゃん。

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本日は以上!・・・おおっと、蛇足がありました、

今年観た、最悪な映画、についてです。迷うことなく邦画「リボルバー・リリー」で決まりです。ただし、出演者の皆さんは何も悪くありません。綾瀬はるかさんも長谷川博己さんも、為すべきことを為しております。悪いのはひとえにクソな脚本と、クソな演出(監督)ですので、その点はよろしく!・・・と、ネガティヴな気分になったところで、したっけ!(←北海道弁の「じゃあね」が出ました~)

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