「〆切(締め切り)本」の悶絶っぷりに、小さく自分を重ね合わせるワタクシ。 [本]

2020年7月。

唐突ですが(つうか、ブログ記事は、だいたい唐突に始まるけどね)、ワタクシ、自分が約束したシゴトの「期限」「日限」をかなり、しっかり守る、意外にご立派なサラリーマンなのであります(自慢)・・・と書くと、「そんなん当たり前だろうがあっ。金をもらっている以上、日限を守るのは学生アルバイトだってフツーにするわっ」と、即ツッコミされそうですが、あはあ、アナタ、まだ世間知らずのシロウトさんですな。現実は決してそう簡単ではございません。

世の中で、シゴトに関する約束がいかに簡単に無視され反故にされ踏みにじられておるか。枚挙にいとまなし、つうか、むしろ約束を守るほうが稀少?と思える体たらく。それが昨今の日本の真の姿なんであります。

たとえばの話。ワタクシ、5月に某メーカに対してある部品の見積依頼をしました。7月1日までに見積回答をくださいね、と伝え、相手からも「了解です!」と(そのときは)元気な返事が来る。しかるに、その後、いっこうに相手からの連絡はなく、メールしても返信がなく、不安に思ったワタクシが、日限1週間前(6月26日)に相手メーカの営業担当者に電話を入れると、驚いたことに、です。そやつの反応は、

あ~、あの見積すかあ、覚えてます、はい、忘れてませんって。でも~コロナとかあ、いろいろあって、正直、作業が全然進んでないす。え?7月1日が約束した日限?まじすか、いや、でも無理だな~。だってコロナとかあ、え?それじゃ困るって?いや、困るって言われても~。なにせコロナ、ですから。うち悪くないし。つうか、どうしても7月1日に見積ほしかったら、アナタ、もっとガンガン攻めてこないと。1週間前に電話されてもねえ・・・。え?7月1日って、お前が約束しただろうって?いや、すいません、すいません、でもぅ、正直ベース、7月の見積回答は、無理、ですわ。8月初旬、いや、中旬になりますねえ。すいませんねえ、はい。

・・・って、この会話後、殺す、こいつ。と思うのはワタクシだけではあるまい。

皆さんがどんな仕事をされているかは知りませんがね。こんなもんです、今どき。結婚式で永遠の愛を「誓った」はずの男女が、1か月後にツラッと離婚する例を引合いに出すまでもなく、約束とは、その時点での「希望」にすぎず、後々に生じた状況・心理・感情の変化によって変更しうる、というのが「約束を守らぬクソ人間たち」の言い分なのである。

ありていにいえば、「忙しかった」とさえ言えば、約束など守らなくても許される、と勝手に決めてる自己中心野郎、つうことです。「日限に遅れそうなら、せめて早めにそのことを連絡しろ」つう当方の思いなど、通じるわけもなく、ワタクシの眼前には、虚空の闇が広がるばかり。

われわれは希望に従って約束し、怖気に従って約束を果たす (ロシュフコー)

もはや「怖気」すら持たない、ある意味、精神力頑強な輩(ただのクソですがね)のなんと多いことよ。。。

というのが、本日の前置きです。って、前置き、長っ!

唐突ですが(←本日2回目)、今年一番、ワタクシのツボにはまった本を紹介いたします。

タイトルは、〆切(締め切り)本、であります。

sinekiri01.jpg
本の帯に「作家としめきり。悶絶と歓喜の94篇」とありますように、明治の文豪から、きょうびの人気作家、漫画家にいたるまで「締め切りに追われる人たち」の苦悩?を、エッセイ、手紙、実録レポートなどであぶりだそうという好企画なのであります。ちなみに、好評だったのか、第2弾も出ていて、ワタクシは両方まとめて読みました。

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夏目漱石、谷崎潤一郎、森鴎外、川端康成、太宰治、島崎藤村、志賀直哉、内田百閒、稲垣足穂、坂口安吾、松本清張、横溝正史、手塚治虫、高橋留美子、藤子不二雄、水木しげる、澁澤龍彦、椎名誠、町田康、赤瀬川原平、村上春樹・・・そうそうたるこれらの面々のほかにも、登場人物は豊富で、しめきりネタが満載であります。

ホテルに缶詰めにされ、日限を大幅に過ぎても、原稿用紙に一行も書きだせない作家。その悶絶と苦悩・・・ときくとダーク雰囲気を予想するでしょうけど、ヒトゴトだからでしょう、かなり笑えますよ、楽しめますよ。

圧巻なのは、野坂昭如さん。編集者からの矢のような原稿催促に、野坂さん、「逃亡」して行方不明になるんですね。逃げる野坂さんを追いつめ、ついに見つけ出す編集者たちの執念の様は、刑事ドラマそのものであります(それを小説にしてはどうか?)。

いっぽう、真逆のすごさと言えば、ワタクシが愛する吉村昭さんです。小説作風そのまま、きっちり律儀。一度として原稿の締め切りに遅れたことがない、という超ストイックな自己管理のお方。そういえば、この本には登場しませんが、辻邦生さんも原稿は日限「前」に必ず出版社に送るとのハナシでしたなあ。

以上で、前置き「その2」が終わりです。って、まだ前置きかよ!

ここからは自分のハナシ。8月開催の某学会の講演論文作成のため、、ワタクシ、5月のGWに必死に系統解析をやっておったわけです。(当時のブログ記事は→ここクリック)。ワタクシが必死だったのは、学会事務局への原稿提出日限(締め切り)が、5月中旬だったから、です。ところが、その後、コロナの影響で会場発表が中止となり、論文受付けのみに変更され、それに伴い、論文締め切り日が、5月中旬から、6月22日へと、1か月ほど延びたのですね。

これが良くなかったんだなあ。

日限が近いので頑張る、って事あるでしょう。ワタクシの場合、GWに、発表の「肝」である解析を終え、あとは論文の「文章、図表」を書くのみ・・・登山でいえば8合目まで到達していたのです。しかし、締め切り日が1か月以上も延期になったため、なんつうんですか、緊張が切れた、つうか、やる気が失せた、つうか、堕落した精神状態に陥ったのであります。

しかし締め切りは延びただけであって、着実にやってくる。6月22日が近づいてくる。参りました。お忘れかもしれませんが、冒頭記載したようにワタクシ、「日限を守る」プライドはあるので、やらねばならん!とアタマで思うのですが、一度切れた緊張を取り戻せず、どうしても論文作成作業に手がつかないまま、日が経つ、日限が近づく。結果、イライラするう。身悶えするう。前出の「約束破るなど当たり前」と思えるクソ野郎が、心底、羨ましかったなあ。

結局どうしたか、つうと、意を決し、6月13日に自らを密室に「缶詰」にし、無心(?)で論文の文章と図表の作成に特化、なんとか苦境を乗り越えたのでありますなあ。めでたし、めでたし。

で、話はメビウスの輪のごとく、あるいは、西城秀樹さんの歌う「ブーメラン」のように戻り、「〆切本」です。この中に、東京大学の松尾豊教授の論文調エッセイ(分析?)が収録されており、そのタイトルは

なぜ私たちはいつも締め切りに追われるのか Why Are We Researchers Always under Deadlines?」。

冒頭から笑えました。まさに今回のワタクシじゃないの。理系研究者ならだれしもツボにはまるでしょう。最後にその箇所を紹介し、だらけた長いブログ記事を終わります。ところで、以下の松尾先生の「問い」に、あなたはどう答えますかね?ふふふ。

Summary 研究者はいつも締め切りに追われている。余裕をもって早くやらないといけないのは分かっている。毎回反省するのに、今回もまた締め切りぎりぎりになる。なぜできないのだろうか?我々はあほなのだろうか?

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