映画「ロストケア」。松山ケンイチさん演じる介護士が、42人もの高齢者を殺害した理由とは。 [映画]

2023年4月。

先週(4月9日~14日)はいつになく複数のシゴトが重なり、毎日、技術見解書まがいの書類をポチポチ作っておりました。作業が一段落した金曜日、文章を書くことに飽き、ブログを書く気も失せ、札幌の兄から送られてきた昆布焼酎を、鮭とばをツマミにクイクイと呑んでおったわけです。しかし。

昨日土曜の早朝。そうだ、あの映画を観に行かねば!と気合をいれ朝7時半にクルマで家を出発、ご近所のシネコンで、8:20からの上映に参じたのであります。

観たかった映画とは、ずばり「ロストケア」であります(3月24日より公開)。

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高齢者42人を毒殺した介護士の斯波(しば)宗典を松山ケンイチさんが演じ、彼を取り調べるうち社会の残酷・矛盾と向き合うことになる検事、大友秀美を長澤まさみさんが演じています。二人の対話を軸にして物語は展開していくわけです。

斯波はなぜ42人もの高齢者を殺したのか?彼は検事に対し、老人たちを殺したのではなく「救った」と言い、同時に、介護により疲弊し絶望する家族を「救った」と言い、さらにはそれこそが「正義」だと言い切るわけです。当然、法律的には殺人に過ぎず、犯人である斯波は極刑に処されるべき・・・ですが、本作は、この問題ってそんな単純に割り切れますか?という、シビアで深い問いかけをしてくるわけです

家族のきずなは同時に呪縛でもある。そう、いま、親は元気、自分も元気で生きている人たちも、介護する側になり、やがて介護される側になる(可能性がある)。誰もが避けて通れない道であって、もしかするとその先には一度落ちたら抜けられない深くて暗い穴が、待っているかもしれない。非情だけどそれが現実なんですよ、と・・・。

それにしても、本作の関係者の方々(原作、スタッフ、キャスト、etc)には頭が下がります。現代日本におけるリアルで切実なテーマを、的がぼやけて発散することもなく、しっかりまとめきっております(なんらかの結論を出している、という意味ではない)。この手の映画って、言いたいことを言い出したらキリがないわけで、語り過ぎず、しかし語るべきことを語る、節度、バランス感覚が素晴らしいなあ、と思いました。

ワタクシのようなジジイは、認知症老人を扱った映画といえば即座に、森繁久彌さん主演「恍惚の人」(1970年代)を思い浮かべます。あの映画は、あまりにドメスティックで閉鎖的で観ていて気が滅入りましたが、それに比べて「ロストケア」はテンポがよく、重いテーマながらもエンタテインメント仕立てであって、時間を忘れて映画にのめり込みましたね。脚本も演出もよく練られているなあ~と感心。

とはいえ、何が一番凄いか、といえば、観た方は同意見と思いますけど、松山ケンイチさん、長澤まさみさんの熱演!そこに尽きるでしょう。

とくに、斯波の一途であるがゆえに屈折した信条、深い悲しみ、強い意志を体現した松山さんには惚れ惚れしました。ご本人に怒られちゃいそうだけど、この方って、こんなにすごい演技派俳優だったんですね。デスノートの「L」を観たときから、いいなあ、とは思ってましたが、まさかここまでとは・・・ううむ、衝撃だ。

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脇を固める俳優さんがまた素晴らしい。軽度認知症の、大友の母を演じる藤田弓子さんは安定の演技。「この人には幸せになってほしいなあ」としみじみ思わせる坂井真紀さん。「沈黙のパレード」で不幸を背負うお母さんを演じ、本作でも、父親の介護でヘトヘトの戸田菜穂さん(こうゆう役にホント、はまります)。

そして、大友検事の補佐をする若き事務官を演じた、鈴鹿央士さんがいい味なんですねえ。まさにキャスティングの妙、ですね。

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で、最後にこの方ははずせません。斯波の父親役の柄本明さん。演技が上手い、とかいうレベルではなく、これは憑依ですよ!ポゼッションですよ!イザベル・アジャー二ですよ(勢いがついて余計なタームがはいった)。「湯道」で角野卓三さんを湯船に投げ込んだシーンも凄かったけど、こっちの柄本さんは、そんな生易しいレベルじゃないですから~~。ブルブル震えました。

というわけで、映画の後半、ボーボーと泣き、エンドロールで流れる森山直太朗さんの曲を感動とともに噛みしめたワタクシなんでありました。

私事ですが、昨年末に90歳で死去した私の実母。最後1年はボケが進んでしまい、私が誰なのかも全く分からなくなりました。そうゆう状況に直面すると、生きる、とは何か、生きてさえいれば幸せなのか、それはいったい誰にとっての幸せなのか・・・といったことを考えちゃうわけです。人生100年時代とニホンコク政府はノンキにほざいてますが、長生きってそんなに良いコトなのかなあ、と、正直、私は疑問をぬぐえないわけです。私は明日死ぬのは困るけど、100歳まで生きるのも勘弁願いたい、たとえどんなに健康であっても。。。おっと、話が散らかった、いかんいかん。では最後、映画「ロストケア」の予告編を貼り付けて、本日は以上!



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