アンジェラ・ヒューイットさんの弾くバッハ「平均律クラヴィーア曲集(全曲)」がココロにしみる。 [クラシック音楽]

2021年3月21日。

ブログの更新を1か月ほどサボっていたら、一都三県の緊急事態宣言が解除されました。ワタクシが住む千葉県と、職場のある東京都に希望の光が・・・と書きつつ、来年の今頃も、日本のコロナ状況は、今とたいして変わらんかも、とシニカルな気分になったりもします。

私事ですが、2月前半から今月(3月)と、札幌の実家でいろいろなデキゴトがあり、回収作業のため、関東と北海道を行ったりきたりだったワタクシ。先週は札幌のビジネスホテルで6泊7日。やっと一段落して、今は、久しぶりに自宅のオーディオ部屋で、まったり音楽を聴いているのであります。ああ、落ち着くなあ。。。

さて、多少の精神的混乱などがあったあと、聴きたい演奏(CD)というとこれ、であります。

バッハ「平均律クラヴィーア曲集」全曲(1巻第1~24番、2巻第1~24番)、堂々のCD4枚組であります。あまたの著名ピアニストが、鍵盤音楽の金字塔たるこの楽曲を録音しておりますが、ワタクシが愛する演奏は、これで決まり!なのです。

カナダのピアニスト、アンジェラ・ヒューイットさんによる同曲二度目の録音(2008年)であります。

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芸能人の食レポっぽくてすいませんが、もう絶品としか言いようがないです。脳天がしびれます。たまりません!

一音一音の活き活きとした息遣い、音色にこもった楽曲への愛情、フレージングの自然さ、優しさ・・・音階が上昇するときは天国へ昇るような心地よさであり、いったいゼンタイ、どうしてこんな演奏が出来たのか?なんかの魔法ですか?と言いたくなるワタクシです。

そして、ヒューイットさんといえば、なんたって彼女の愛機、イタリアのピアノ・メーカ、ファツィオリ製の特注ピアノでしょう。シロウトのワタクシの耳をしても、繊細なニュアンスと音色にはウットリします。世界の老舗ピアノメーカが創業後かるく100年を超えるのに対し、ファツィオリは、1981年の創業、たった40年ですからね。後発メーカながら、ステージピアノの帝王スタインウエイを脅かす大躍進を重ねております。

ちなみに、ファツィオリのHPに、ヒューイットさんがファツィオリに送った感謝のメッセージが掲載されております(以下)。

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すいません、ピアノのメーカのハナシは、どーでも良いのでした。

ワタクシが言いたいのは、昨今、バッハ作品は器楽曲、管弦楽曲に関わらず「バッハが生きた時代の楽器や様式で演奏する」いわゆる古楽器(ピリオド楽器)演奏が業界を席巻しており、あたかも、それが唯一の正しい演奏、という誤解をする方々もいるわけです。鍵盤楽器なら、ピアノではなく、チェンバロ(ハプシコード)で弾こうよね、つう話です。

いっぽう、ヒューイットさんは、チェンバロではなく、もちろんバリバリのモダン・ピアノで演奏します。それゆえ、バッハの時代に不可能だった、音の強弱をつけることが出来るわけで、その意味で、演奏はまさしく現代風であります。

しかし、それが良いのです!音楽はチェンバロだから正しく、モダンピアノだから間違っているという楽器の論議ではありません。かっこよくいえば演奏にこめられた精神や音楽性が、どれだけ具現化されているかが重要なのですよ。ヒューイットさんの弾くファツィオリには、それらが満ち溢れているのであり、聴き手(の私)のココロをわしづかみ、なのであります。

ひいきの引き倒しと言われようと、ヒューイットさんの「平均律クラヴィーア」には、後の時代の作曲家であるメンデルスゾーン、ショパン、シューベルトさえ聞こえてくるんですね。これこそ、21世紀におけるクラシック演奏の醍醐味ではないでしょうか?妄信的に「当時(過去)に戻る」のではなく、モーツアルトを知り、ベートーヴェンを知り、マーラーを知った「今」の頭で演奏家はバッハを弾き、「今」の耳でわれわれはバッハを聴く。大河ドラマのような、そうした喜びを与えてくれる、ヒューイットさんのバッハ演奏なのであります。

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ここで、哀しいお知らせであります。ご存じの方も多いと思いますが、たしか昨年だったと思いますが、ヒューイットさんが、ほぼすべての録音で使用していたファツィオリ製のピアノが、輸送中、業者のミスで、落下し破損してしまったのですね。修復は不可能。2000万円超の特注の愛機は、天国へと旅立ったのです。

ヒューイットさんの悲しみ、無念は察するに余りありますね。それにしても、ピアノの輸送業者といえば特殊職でしょう、ピアニストにとって楽器がどれほど重要かは重々分かっていたはず。状況は分かりませんけど、ピアノを落下させる、なんて、一番やっちゃいけないミスですよね、サイテーですね。と、そこに憤ってもしょうがないのですが。

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外野の無責任発言かもしれませんが、ヒューイットさんが、新たなファツィオリの名機に出会い、その楽器とともに、今後も素晴らしい演奏を聴かせてくださることに期待しております。本日は以上!

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