ブルックナー「弦楽五重奏曲」のフルオーケストラ版、ゲルト・シャラ―さんらしい納得のマニアック企画だ! [クラシック音楽]

2019年2月。

クラシック音楽ネタが続きますが、本日も懲りずに書いてしまいます。それもかなりのマニアック案件です。こんなキワモノ(失礼)なCDまで買っちゃうワタクシの人生は、世間で流行りの「断捨離」とは、ほど遠いのであります。

今回紹介するCDは、これです。ドーン。

ブルックナー作曲「弦楽五重奏曲」の、フルオーケストラ版、であります。

シャラ―01.jpg
このハナシを聞いただけで、おお、そんな珍企画を思いつき実行できるヒトは、彼しかいない!とピンときたアナタ。あなたは、すごい。すごいが、あなたはすでに「彼」の術中にはまっておりますな。

「彼」とは、ドイツ生まれの指揮者、ゲルト・シャラ―さん(1965年生)であります。

CDジャケ写真の風貌からは、ゲージュツカ、というよりは会社役員のイメージですが、まあ、この方はすごい。日本ではあまり知られていませんけど、楽曲への「こだわり」というか「珍しいもの好き」が高じ、ちょっと特異な立ち位置で有名になっているのですね。

英語版Wikiの、シャラ―さんの経歴には、のっけからこう書かれています(下線部は私が付けました)。

Gerd Schaller (born 1965 in Bamberg) is a German conductor, best known for his performing and recording rare works・・・・

「とくに、珍しい作品の演奏と録音で知られている」とあり、うーむ、やはりねえ、と腑に落ちるワタクシなのです。

本題から話が逸れますけど、ワタクシが初めてゲルト・シャラ―さんを知った録音(CD)は、2013年に発売されたシューベルト交響曲第7番「未完成」の、全4楽章版という珍企画モノでした。ご存じのように、第1、第2楽章しか残っていない(それがゆえに名作とも思える)シューベルト音楽の最高峰に対して、ある意味強引に、第3楽章と第4楽章をくっつけ「完成版」にしちゃった賛否両論の挙なんであります。

そのCDへの感想を、2013年7月30日にブログにアップしております(ここ→クリック)。当時の自分が、感想を書くのに苦戦している様子が分かります。

さて、ゲルト・シャラーさんは、敬愛するオーストリアの作曲家、ブルックナーの交響曲全集の録音を進めて、8年かけて完成させました(2007年~2015年)。その全集がこれです。

シャラ―02.jpg
御仁のマニアックっぷりはここでも炸裂。全9曲の交響曲を残したブルックナーですが、シャラ―さんの全集はCD「18枚組」なのです。公式にナンバリングされていない「0番」「00番」を録音するわ、4番と9番に至っては2種類の版を収録してます。第9番はオリジナルが3楽章の「未完成」なので、そのバージョンとともに、第4楽章を補筆した「完成版」も入れているのですね。加えて、ミサ曲、オルガン曲(シャラ―さん自ら演奏)まで収録する徹底コダワリぶり。

こんな体で、異稿、補稿の探求というマニアック道を進むゲルト・シャラ―さん。ここで、やっとハナシは本題の、

ブルックナー「弦楽五重奏曲:フルオーケストラ版」へ戻るのであります。

作曲家が交響曲として残した材料は極めた、と考えたか、シャラ―さんは、ブルックナーの数少ない室内楽曲に目をつけたのですね。オリジナル曲は長尺(40分)で内容にメリハリがあるので、オーケストラ編曲でも成立するだろう、と思うものの実際にやるチャレンジ精神はすごい。

それも編曲をアレンジャーに発注するのではなく、シャラ―さんが自らがオケ編曲、つう、要するにこの方、そーゆー作業を含めて珍企画が「好き」なんでしょうね。

で編曲&録音された、ブルックナー「弦楽五重奏曲」:フルオーケストラ版、果たして内容はいかに!

ずばり、「これは、最近、新発見されたブルックナーの交響曲です」と言われて何の違和感もありません。それだけ編曲は素晴らしい。ただ先入観が邪魔するせいか、個人的には、ブルックナー楽曲の醍醐味である「エクスタシー」までは感じられなかったですね・・・。

いっぽう特筆すべき、つうか私が声を大にしたいツボは、第3楽章の美しさ、であります。この楽章だけ単独に演奏しても良いくらい。気持ちがトロッとなりました。

これから何度か聴き込んでいくと違った感想も湧いてくるかと思いますが、今日はこの程度で。。。

いずれにしても、クラシック音楽の編曲行為はつねに賛否両論の的となりますね。ラヴェル編曲「展覧会の絵:オーケストラ版」(オリジナルはムソルグスキーのピアノ曲)や、シェーンベルク編曲「ブラームスのピアノ四重奏曲:オーケストラ版」ほどに、世間に認知されるには、20年、30年、いやもっと長い時間が必要なのでしょう。その間、演奏し続けられるかどうか、編曲バージョンの「質」が試されることにもなります。リストが、シューベルトのピアノ曲「さすらい人幻想曲」を協奏曲風にオケ・アレンジしたバージョンなんて、いまだにキワモノ扱いですからね(個人的には大好きだけど)。

ゲルト・シャラ―さんとは年齢が近い(私のほうが3歳年上)こともあって、ぜひ、今後もマニアックなチャレンジを続けて、クラシック音楽を面白くしてほしいです。頑張ってえーーー。

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