内田百閒による人物エッセイ「うつつにぞ見る」から、鈴木清順監督→狸へと連想が広がった日。 [本]

2018年3月。今週は、5日(月)に札幌へ出張移動、7日にいったん東京へ戻り、8日に再び札幌へ。10日に東京へ戻り、13日(火)から福岡へ・・・と、なかなか愉快なピンポン移動の最中であります。

札幌は路上がツルツルでした。明け方の寒さで凍った路面に、日が昇るとうっすら水が溜まりスケートリンク状態。地元民でさえ、転ばぬようソロリソロリ歩くくらいですから、観光客などひとたまりもなくコケております。怖いねえ。

さて今回札幌で宿泊したホテルのすぐ近くに、古本屋さんがあり、昨日、こんな古本を買いました。

内田百閒(うちだ ひゃっけん)著「うつつにぞ見る」。定価1050円が、古本で350円。ラッキー。

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内田百閒さん(1889年~1971年)は当ブログで何度か取り上げました。ワタクシ、小説はあまり読んでないですが、エッセイ(随筆というべきか)は大好きなんです。無為なる旅エッセイ「阿房列車」シリーズのトンチンカンっぷりは絶品です。一転、可愛がっていた野良ネコが行方不明になり百閒さんが日々泣き明かす「ノラや」は、猫好きでしたら涙無しには読めません・・・う、う、涙が・・・。

百閒さんのトレードマークは、このコワモテ顔です。こんな渋面からは想像できない、ひょうきんさ、繊細さ、臆病さが、エッセイに、にじみ出てるとこが、たまらん魅力ですね。

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今回、購入した「うつつにぞ見る」に話を戻します。雑誌に発表されたエッセイの寄せ集めで、共通しているのは、「人物」をテーマにしていること。

登場する人物は、百閒さんと交流の深い方(音楽家の宮城道雄さんなど)だったり、一般人(学校での教え子、経済界のヒト)だったり、それほど深い付き合いのない有名人(谷崎潤一郎氏、正宗白鳥氏など)もおります。

エッセイの内容を書くのは野暮ですね。書き出し一行目の、さら~っとした、そっけなさが良い味だ、とだけ申し上げておきましょう。

「山中君が来た。(『離愁』より)」

「徳川夢声さんが入らしたと云う。(『門の夕闇』より)」

「四谷怪談のお岩稲荷のある四谷左門町に鈴木三重吉さんがいた。(『四谷左門町』より)」

百閒さんの少々懐古的、かつウイットのきいた文章を読みつつ、ワタクシは、あ、そうだ、と思い出しました。

私が内田百閒の名を初めて知ったのは1981年。鈴木清順監督、原田芳雄、藤田敏八主演の映画「ツィゴイネルワイゼン」がきっかけでした。

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サイケで、エロチックで、ストーリーらしいストーリーもなく、それゆえ、これ、もしかしてスゴい映画じゃないの的な謎のプラス評価だった作品。その原作(の一部)と世間がみなしたのが内田百閒さんの小説「サラサーテの盤」だそうで、当時、大学生だったワタクシは「ふーん」と思った。思ったが、原作小説までチェックする気はなく、あれよと、35年以上が経過したのでした。

またぞろハナシは戻り、前述のエッセイ本「うつつにぞ見る」の表紙です。「内田百閒集成17」と記載があり、おやおや、とチェックしてみると、集成4、がまさに「サラサーテの盤」なのであった。

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おお、とワタクシ、ホテルを出ると先ほどの古本屋に戻り、必死に本棚をチェックしましたが、願いかなわず「サラサーテの盤」は入手できず・・・残念だ。来週、八重洲ブックセンターに行って新本で買うとするか。

・・・などと考えていて、さらに連想が広がります。映画「ツィゴイネルワイゼン」の監督、鈴木清順さんのことです。「ツィゴイネルワイゼン」の予想外のヒットを受けてか、清順さんは、その後、松田優作さんや、沢田研二さんを主演にケレン味たっぷりのブンガクテキ映画を撮っておりましたっけ。

時は過ぎて2005年のこと。なんと鈴木清順さんが、オダギリ・ジョー(イケメン)と、チャン・ツィイー(超美人)をキャストに迎え映画を撮るという。なんちゅう唐突。ワタクシ、劇場で公開されるや、映画館に行きました。忘れもしない横浜の高島町のシネコン。

その映画が、これ。「オペレッタ狸御殿」。

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正直、いやな予感はしてたのであります。そして映画が進むにつれ、いやな予感が的中したことを身に染みて感じたのであります。高橋英樹主演「けんかえれじい」を撮った鈴木清順監督の偉業にケチをつけるわけではないが、「オペレッタ狸御殿」は、あまりにも酷い出来であり、関係者にとって消し去りたい過去であろう。いや、ノコノコと劇場までこの映画を観に行ったワタクシ自身が恥ずかしい。怪優 平幹二郎さんをしても、この映画をどうにもできなかった・・・つうか、平さんがヤバさを助長していましたっけ。

いったいどうしたのだ、清順監督!

「漂流教室」なる超駄作を世に放ったゆえに、それまでの業績まで地に落ちた大林宣彦監督と同じテツを、清順監督が踏んでしまうとは。。。

と、内田百閒さんのエッセイ本から、時代を遡って連想が広がったところで、今日はお終いっ。チャオー。

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