1976年の名作映画「タクシー・ドライバー」を再見。やっぱりすげえ、と心底実感した日。 [映画]

2018年2月17日(土)。

出張先から自宅へ帰り、夜、TVをつけると、どの局も同じニュースで大騒ぎです。韓国平昌で開催中の冬季オリンピック。男子フィギュアで羽生結弦さんが金メダル、宇野昌磨さんが銀メダルを獲ったという。おめでとうございます、良かったねえ、頑張ったねえ、感動をありがとう!羽生選手、宇野選手!

・・・という興奮はワタクシにほぼ発生しないです。非国民扱いされるかもしれないが、そもそもワタクシ、フィギュア・スケートという競技に関心がなく、ゆえに誰が勝つ、誰が負けるかは、完全「他人事」、むしろ世間が狂ったようにわーわー盛り上がるのが不思議なのでした。

さてどの地上波TV局も、オリンピック・フィーバーするなか、ワタクシはBS放送に助けを求めました。そして、うわあ、と声が出たのであります。

なんと某BS局が映画「タクシー・ドライバー」を、字幕放送しているではないか!

危なく見落とすところだった。

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映画好きの方には、大きなお世話説明ですけど、「タクシー・ドライバー」は1976年のアメリカ映画。主演は、いまとは違って痩身のロバート・デ・ニーロ(当時33歳)であります。

ベトナム帰還兵の男(デ・ニーロ)がタクシードライバーをしながら、ニューヨークの夜を見続けるうち、精神を病んでいき、やがて狂気の行動へと走る。その過程の、鬱屈した感情と煮詰まった日常が見事につづられ、そしてなだれこむ凄まじいラストシーン・・・仰天したもんです。アカデミー賞こそ逃したものの、カンヌ国際映画祭グランプリをはじめ各賞に輝く不朽の名作です。

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ワタクシは、本作を愛するあまり、公開時(1976年)に映画館でまず3回拝見。その後、再映時に2回。カンヌ映画祭グランプリ特集で1回・・・なんとまあ、この映画を、劇場で計6回も観ているのです(自慢)。主人公の真似をしてカーテンレールを加工、オートマチック・ガンがジャンパーの裾から飛び出る仕掛けを作るなど、ちょっとしたフリークです。

そうそう、本作でデ・ニーロ演じる主人公のファースト・ネームが「トラヴィス」。1984年カンヌのグランプリ作品「パリ・テキサス」(こちらもワタクシが愛する映画)の主人公も「トラヴィス」。そのため、私のブログのタイトルが「門前トラビスのつぶやきピロートーク」になった・・・あ、どーでも良いハナシですいません。

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今回、久しぶりに「タクシー・ドライバー」を拝見でき、本当に嬉しかった。

やはり素晴らしかった。6回も観てるのでストーリーは徹底的に頭に入っており、驚くような新発見はなかったですけど、ホントにもうデ・ニーロさんの演技にしびれます。トラヴィスのような男が知り合いにいたら、いやだなあ、と思う、でも、映画が進むうちに、彼に対し独特のシンパシーつうか感情移入ができてしまう。

今どきの映画の効率的・説明的なサクサク進行とは異なり、もどかしさ、よどみ、妙な間といったものが随所にあらわれ、観ているこちらの気持ちに嫌な澱(おり)を沈ませる。ポール・シュレーダー(当時30歳)の脚本と、マーチン・スコセッシ監督(当時34歳)の手腕に、ほとほと感服してしまいます。

そして、今回観て改めて気づいたのは、脇役たちのはまりっぷり。

濱田岳さん似のハーヴィー・カイテル演じるポン引きのクソ野郎っぷり、シビル・シェパードのキャリアウーマン。なんたって13歳の娼婦を演じたジョディ・フォスターちゃんの生意気な雰囲気、かつ美脚も良い。

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ストーリーに話を戻せばやはりラストシーンでしょうね。売春宿の狭い廊下での壮絶な撃ち合い・・・というかグダグダの殺し合いのリアルさがたまりません。マグナム44だけでなく、用意した武器を使い切るのはお約束ですが、予定調和的な演出ではなく、どうなるかを知っていてもブルッときました。

悪党を全員ブチ殺したあとのトラヴィスが、ソファに深く腰掛けながら、血まみれの左手の人差し指を自分の頭に当てる。引き金をひく動作をしながら、パフゥ、とつぶやく名場面。圧巻の演技だ。たまらんなあ。

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岩手県の日本酒「タクシー・ドライバー」のラベルにも、きっちりとこのシーンが使われておりますなあ。

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しかし!

ワタクシは申し上げたい。本当の見るべきラストシーン、は、その「後」です。トラヴィスが運転するタクシーから降りたベティ(シビル・シェパード)をサイドミラーごしに見送り、なんとも言えない表情でゆっくりタクシーを走らせた、彼の、瞬間の素早い動作。どーですか。あの「目」の演技・・・。

何度、この映画を観ても、あそこのシーンで、うーむと唸ってしまうワタクシです。なぜ唸るかは・・・ま、そうゆうことです。

思えば70年代から80年代半ばまでの映画には、なんというかなあ、魂、がありましたね。「イージー・ライダー」「ファイヴ・イージー・ピーセズ」「わらの犬」「カンバセーション、盗聴」「スケアクロウ」「真夜中のカーボーイ」「ジョニーは戦場へいった」「カッコーの巣の上で」・・・受け売りセリフですけど、映画がすべてを教えてくれた、というときの「映画」とは、私にとってあの時代の作品です。昨今の映画が一概に悪いと思わないが、当時あった「何か」が、今は失われたように思えます。こんなことを想うのも、歳をとったせいかしらん。ちゃんちゃん。

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