イギリスのヴァイオリニスト タスミン・リトルさんの協奏曲CDにウットリ、であります。 [クラシック音楽]

2013年9月。最近、じっくり聴いているお気に入りのCDについて書きます。

イギリスの女性ヴァイオリニスト、タスミン・リトルさん(Tasmin Little, 1965年生)が、80年代後半から90年代にEMIに録音した協奏曲集、ソナタ集、小品集です。題して「タスミン・リトルの芸術」、CD2枚組が4セットの計8枚。

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ハナシが長くなるので「協奏曲」に限って書かせていただきますね。

50のレパートリーを持つといわれるタスミンねえさん。世の中にそんなに沢山のヴァイオリン協奏曲があるのか!と、そこに驚いちゃいますが・・・。で、このセットに収録されているのはブラームス、ブルッフ、シベリウス、ラロ、ドヴォルザークという、それなり定番曲と、彼女のライフワークであるディーリアス。

有名なチャイコフスキー、メンデルスゾーン、ベートーヴェンの協奏曲はありませんが、聴き進むほどに問答無用の「タスミン節」をたっぷり堪能できる素晴らしいセットなのであります。

タスミン・リトルさんの演奏、いったい何が素晴らしいのか。

・・・を語る前に、最近のヴァイオリン協奏曲の新録音CDについてエラソーに書きますと、特徴として、ヴァイオリニストの技巧(テクニック)が超絶、リズムが明確で、オーケストラとの掛け合いがスゴイ。録音がひじょうにクリア、という点が挙げられます。良いことづくめですが、いざ聴いてみるとなんだか窮屈で、切羽詰まった緊張感に居心地が悪くなります。たしかに、機能美と音質はスゴイのですが、聴いて疲れる演奏ってのもなあ・・・。

では、タスミン・リトルさんはどうか?

彼女は機能一辺倒のアーチストではありません。誤解を恐れずに言えば「前時代的おおらかさ」を持っておられる。技巧よりも抒情(感情)を優先している(ように聞こえる)、これが良いんです。自然体の美学とでも言いましょうか、体のなかから湧き出るテンポで柔軟に音楽を作っていきます。ですから聴いていて気持ちが安らぐんですよ。

オーケストラの演奏に、ソリストのヴァイオリンが加わる箇所。きっちり拍を合わせ、強いアタックから始めるヴァイオリニストが多いですが、タスミンさんの場合は「入り」の音がやわらかく、すぅーっと音色が溶け込んでいく感じなんです。フレージングもヘンにメリハリを際だたせず、スムーズなのが気持ち良い。

ブルッフの第一楽章が典型ですが、ゆったりと弦の音を伸ばすので、音楽に「ゆとり」が生まれ、まさにこれがタスミン節であります。悪く言えば間伸び、ですが、機械で測ったような若手ヴァイオリニストの音なんぞに比べ、タスミンさんの古色蒼然ともいえる「人間味」こそがよっぽど心を打つのであります。強烈な美点です。

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ちなみにこのCDセット、80年代~90年代のデジタル録音にしてはオーケストラの音がもやっとしており(EMIらしいともいえる)、オケの演奏がもたつくこともあります。こうしたマイナス要素さえタスミンさんを引き立て、むしろプラスになっている。瓢箪から駒ってのはこのことかな?

CDジャケットのアートワークは、なんちゅうか、ですね。タスミンさんの写真はモノトーン。まるで戦前のヴァイオリニストの残したモノラル・レコードのたたずまい。録音時のタスミンさんはまだ20代ですよ。おばちゃんっぽい写真だけど、ほかに良いのがなかったかな。現代作曲家アルヴォ・ペルトの曲が収録されているとは思えぬ、ジャケットの「古臭さ」は明らかにやりすぎですね。

タスミン・リトルさんは現在40代後半。現役バリバリでコンサートや録音に活躍中です。イギリスのCHANDOSレーベルから活発に新録音をリリースされてます。最新録音はブリテンのヴァイオリン協奏曲(下写真)。まさにこれからが円熟期のタスミンさん、来日公演ないのかな~。

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