技術立国(のはずの)日本の凋落、恐るべし。無駄なサバ読みで、スピード感が限りなく低い現場の現実。 [雑感]

2023年5月。

本日は呑みネタではなく、ちょいと真面目に、日本の技術者(エンジニア)のスピード感の低さ、生産性の低さを憂いちゃう、という企画です。これまでの経験にもとづき、極私的&好き勝手な意見を述べよう、と思う次第。

え~~ワタクシ、昨年6月に電機メーカ(重電系)を定年退職し、いまは個人で技術コンサルタントまがいの仕事をしております。むかし取った杵柄(←死語すかね?)で企業さんへ技術アドバイスや社員教育講師などをします。内容はそれほどすごいわけじゃありません。相手は電気のプロではないため、どちらかといえば基本事項について、資料を作って説明して質疑に答えるといった感じですな。

以下、一般の方には馴染みのない業界的なハナシになりますが、ご容赦を。

日本のどこかに新しく発電所を作るとか、新しいプラント(工場)を建てるといった場合、工事の着工前に行うべき必須の検討事項がいろいろあります。土地確保や地元との交渉(法務)、建設費(費用)はもちろんですが、私の専門である「電気」に限って言えば、発電所や工場を既存の電力網に接続して問題はないか?が最初の重要テーマです。電気をやりとりできなければ、計画自体が成立しないわけで、そこは大切ですわね。

検討に用いる手法はコンピュータによる解析(デジタル・シミュレーション)です。代表的な解析項目としては、新設設備が運転したさいの、既存電力網の電圧への影響(潮流計算)や、波形ひずみの度合い(高調波計算)などになります。

さて、こうした初期検討にワタクシが関わるとき、じっさいに解析するのは専門の業者さんで、私はその解析結果に対してコメントや指摘をすることになります。まあ、他人様のシゴトの粗探しみたいなもんですな。

では、本題である日本のエンジニアの問題点について、解析業務を一例にツッコミを入れていきましょう。

問題は、業者が、結果を出すまで、時間がかかりすぎる、という点です。もちろん対象回路の複雑さ、パラメータ・スタディの数(解析数)により時間がかかることはあります。とはいえ、ローカル系統であれば、複雑といったところで、1か月もあればそれなりの精度の結果は出せるでしょう、と申し上げたい。

業者はそれを「4か月かかる」という。自分も去年まで「そちら側」だったので上からエラソーに言うのもナンですが、まじめにやってるんかい!と文句も垂れたくなります。こーゆーと「重要な検討なんだろうから、じっくり時間をかけてやるべきだろ」という反論(?)が出るでしょうが、そりゃあ話が逆ですね。

解析の結果によっては、計画の大幅修正が発生するかもしれない。動く額でいえば数十億円、数百億円でありオオゴトです。それゆえ、4か月もかけてチンタラやってないで、さっさと解析結果を出せよ、という事ですよ。スピード感の欠如も甚だしい、という事です。

「いやいや、業者さんは、この仕事だけしているわけじゃない。無理言っちゃいかん」というなら、もっと厳しくツッコミますが、基本解析は、1か月どころか、1週間もあればできます。いやホントですよ。それを証明するため、本来の私のすべき業務ではないけど、GW前、私は1週間で解析結果を出しました(←完全に自慢じゃ。これを言いたかっただけかな)。

繰り返します。シゴトの日限にサバを読むのもほどほどにしろよ、という事です。誤解なきよう申しますけど、この1件だけをもって日本のエンジニアがダラダラしている、とは申しません。過去30年以上、この手のシゴトに関わった経験で、エンジニアの多くは切羽詰まらない限り、基本ダラダラしている、と言っておるのです。言葉が悪ければこう言い直しましょう「無駄な作業に時間を費し、肝心なことに手が回らず、後手後手に回ってOUTPUTの質を下げている」と。つまり、自分に甘いスケジュール設定により、結果的に、生産性を低下させ、仕事を劣化させている、ということ。

さきほどの例でいえば、1週間もあれば出来る報告書を、相手の無知を良い事に、4か月かかると言ってタンマリ金をせしめるこの作戦には悪意すら感じます。小学生の夏休みの宿題と同様、どうせ最初の3か月はなにもせず、日限が迫った最後1か月(1週間?)でバタバタ作業するのは目にみえており、そんなやり方だから、結局、ろくなもんが出来ないってことです。そうして、エンジニアの技術レベルまで下がるわけです。

どう思いますかね?提出日限=5月30日と約束した報告書があったとする。日限とは「デッドライン」のことであって、最悪でも、5月30日には提出する、という意味です。さっさと出来るなら日限の1週間前、5月23日に出せばいいじゃんと思う。ところがどっこいエンジニア(だけじゃないだろうけど)の多くは、日限ジャストの提出をターゲットに作業するから、不測の事態がおきると約束を守れなくなる。よしんば日限どおりに提出できたとしてもギリギリ日程で作っているから、推敲する余裕はなく、上司のチェックも不十分。内容は杜撰で記載間違いや誤字・脱字だらけの体たらく。社内で怒られ、客に怒られ、作り直しの二度手間で時間がますます無駄になる。嗚呼、技術立国ニッポンと胸を張ってた時代はどこへやら。。。ま、そんな寂しい景色は、昔から日常茶飯事でしたね。トホホ。

これってエンジニアの技術力や自己管理というよりは、組織としての躾(しつけ)という切り口で議論されるべき問題でしょう。常時、シゴト(日限)に追いたてられてりゃ、気は滅入るしモチベーションも下がる。そんな負のスパイラルを断ち切る工夫と実行が、組織レベルで必要なのであります、えへん(お、エラソーの極みだ)。

打合せばかりで作業時間がない、社内手続きが煩雑、コミニュケーションが不足、残業規制でシゴトが回らない、など言い訳はいくらでも出来るけど、言い訳は言い訳に過ぎず、一度、根本的にやり方を見直したほうが良いですぜ、エンジニアの皆さん、と申し上げたいですなあ。合掌。

ちなみに、じゃあ、海外企業はどうなんだ、ちゃんと出来てるのかよ、というと、むしろ平気で日限や納期を破るのが彼らの流儀ですね。しかし彼らには「エクスキューズ伏線」という日本にはない(到底根付かない)荒業があるので怖いモノ無しなんですなあ。ギブ・ミー・チョコレート、と兵隊さんを追いかけていた時代から、メンタルの強さと小賢しさに関しては、日本は到底、海外にかなわないのが現実であります。無駄な長文で、話が散らかったところで本日は以上!

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 Acalanātha(アチャラナータ)

まったくその通り!
と、超ド級の共感であります。
ここ数年(10年くらい)強く感じており、年々その思いは増幅していくばかり。
ちなみに業界、業種は異なりますが、書かれている内容は実に同じなのであります。
それはもはやそちらの業界のエンジニアに限ったことだけではなく、日本全体がそのような感じです。
組織的問題と述べてありますが、全くその通り。そうなんです、組織的な問題なのです。
いくら経験と、結果と正論を結び付けて説明したとて、多勢に無勢。
何事にも面倒くさい、と思う人間が多ければ、変わるものも変わりゃしない。

さらに言えば、企業のトップ(例えば技術系企業であっても)が、どっかの銀行出身者なんかが座につくと技術は二の次、三の次。
とにかく金が第一主義。その下につく者たちは、できれば楽して儲けよう精神に至る。
当然、組織は腐っていく。
今や日本政府からしてそうだからどうしようもない。
こんな日本に誰がした? (A倍がした!)
経済至上主義=超資本主義は、モラルを一切欠いた社会。目先の金だけが何より大事。
老人を狙うオレオレ詐欺や、強盗たちとやっていることはなんら差はないではないか。
差はないんだよ。

それを黙って見ているべきか(自然に任せるべきか)、苦言を呈しながらも関わっていくべきか…
『義を見てせざるは勇無きなり』
という武士道の教えが頭によぎるものの、今の時代、今の社会、どれほどの意味があるものだろうかと、勇無き自分がチラホラと現れては消え…を繰り返す。

いやはや、失敬、失敬。
つい、こちらでの旬な話題だったため、大きく反応してしまいました。
こんなことを同世代で毎日のように嘆いているのでありますよ。ははは。
by Acalanātha(アチャラナータ) (2023-05-06 18:50) 

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