クラシックコンサート。河村尚子さんの弾くモーツァルト ピアノ協奏曲21番の「超絶まくり」に感動の夜。 [クラシック音楽]
2014年10月も終わりに近づき、ますます秋が深まりましたね、嗚呼・・・と、時候の挨拶的に書き始めてしまった。無駄な冒頭ですいません。
約2ヶ月ぶりにクラシックコンサートに行ってきました。10月30日(木)、会場は池袋の東京芸術劇場であります。
80歳を超えるチェコの指揮者、「遅れてきた巨匠」ことラドミル・エリシュカさん(1931年生まれ)が、読売日本交響楽団を指揮してお国もの直球勝負、ドヴォルザーク交響曲9番「新世界より」を演奏するのです。
エリシュカさんって誰っすかあ?という方も多いでしょう。無理もありません。これまでエリシュカさんの活動は、東欧が中心だったため、世界的にはそれほど知られていません。先見の明があった札幌交響楽団が、2008年からエリシュカさんを首席客演指揮者に据え、以降の大活躍から、お名前が日本で知られるようになりました。ここ最近、在京の楽団でも指揮をされていますね。
クラシック音楽は、リスナーが高齢のためか、はたまた「長いキャリア=深い芸術性」という盲信ゆえか、「日本では知名度が低いけど、実力派のご高齢指揮者」をうたい文句にすると、それなり集客できるみたいですね。ちなみに、ここでいう「ご高齢」とは、80歳や90歳のことで、フツーの職業とはレベルが違います。
今回のコンサートのポスターも、エリシュカさんを前面に押し出したデザインになってます。注目曲が「チェコの名匠が振る、チェコの偉大なる作曲家の名曲」=「新世界より」なのは必然でしょう。
しかし!!
ワタクシがコンサートに足を運んだ目的は、そちら(ドヴォルザーク)ではなく、ずばり、
河村尚子(かわむらひさこ)さんの弾くモーツァルト ピアノ協奏曲21番、であります。
当ブログで、何度も取り上げてきた河村尚子さん。ドイツを拠点に活躍されるピアニストですが、チャーミングな外見や、ご年齢(まだ30代前半)とは裏腹に、個性満開、演奏完璧、強烈打鍵、超絶技巧、歌心横溢のアグレッシヴな演奏を展開され、実演に触れれば感動必至。間違いなく、今、日本が世界に誇るべき天才なんであります。
さて、本題の、10月30日の河村さんの演奏です。
いやはや、いつものことながら、河村さんのプレーに身も心もメロメロのワタクシであります(←この表現、少々いかがわしいですな)。私が、河村さんの実演に接するのは10回以上、モーツァルトの協奏曲ですと3回目です。前回はこぶりな9番「ジュノーム」でした。今回、モーツァルト芸術を代表する名曲21番ですけど、正直、ワタクシはそれほど好きではない。どの楽章にも素晴らしい瞬間はあるものの、個人的には散漫な作品という印象を持っていました。
ところが。河村さんの手にかかると、「散漫さ」すら、スリリングな面白さへ変わってしまうんですね。
奇をてらったり無茶なアドリブは加えません。にもかかわらず、フレージングに独特のグルーヴ(勝手に「河村節」と命名しております)があって、目が離せないというか、耳をそらせないというか、音楽の吸引力が圧倒的なんですね。オーケストラとピアノが、あるときは溶け合い、あるときは拮抗しながら、自由闊達に、音がホールを飛翔するような開放感といったら・・・。音楽に酩酊して、頭がくらっとしちゃいます、いや、マジで。
21番ってこんなに良い曲だったのかあ、と、目からウロコの衝撃体験であります。
この曲は、カデンツア(オーケストラのバック無しで、ピアノだけで奏でる部分。何を弾くかはソリストにゆだねられている)を、モーツァルトが残していません。河村さん、どんなアプローチでくるかな~と思ったら、交響曲40番の動機を、つうか、交響曲40番の冒頭部分をそのまま弾くパターン。そう、それをやって欲しかったんだあ~と、ここでも感激です。
終楽章(第3楽章)はまさに圧巻。オケとピアノが、同じフレーズで「かけあい」をする箇所。誤解を恐れずにいえば、クラシック音楽というよりは、もはやジャズのノリですね。「かけあい」ではなく、音と音のぶつかり合い、挑発行為であります。河村尚子さんが超絶技巧で繰り出すピアノからの「まくり」「あおり」に、オケも負けじと、音をぶっつけてくる。うはあ、こりゃスゲエや。
モーツァルトの音楽を単なる「きれいごと」では済ませない、深さがある、といいましょうか。それを音として具現できるテクニックと精神に、ただただ脱帽するワタクシなんであります。ソリストもさることながら、「受けて立つぜ」の気概の読売日本交響楽団、そして指揮のエリシュカさんも、絶賛されるべき名演でありました。パチパチ。
・・・おっと、河村尚子さんの弾く協奏曲の話がすっかり長くなってしまった。ぎゃん。
最後にとってつけたようですが、コンサート的にはメインの曲、ドヴォルザークの交響曲9番「新世界より」でございます。これまで、指揮者もオケも飽きるほど演奏してであろう超ベタな名曲ながら、ステージ上では、ルーチン的ではない、集中力とメリハリに富む演奏が展開されました。予想どおり意外な仕掛けは皆無の、どっしりブレない王道演奏。いやあ、こうゆうのも良いなあ、と思いました。はいっ。
というわけで、今回の、素晴らしいステージに触発され、11月以降は、どんどんコンサートに行くぞ!と気合が入ってしまったワタクシなのであります。元気いっぱいになったところで、以上!
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