突然ツボにはまったマリス・ヤンソンス指揮 ショスタコーヴィチ交響曲全集(EMI) [クラシック音楽]

2012年8月。

最近、やっと仕事が一段落・・・といっても世間が夏季休業時期となり、一時的に出張が減っただけなんですが・・・いずれにしても、5~7月に比べて自宅時間が増えましたよ。

某日、自宅のオーディオ部屋でぼんやりしていたところ、「購入したけど、ほとんど聴かずお蔵入りしたCDを聴いてみよう」と思い立ち、棚からいくつか引っ張り出して聴きはじめたところ、これが楽しくて、立て続けに40枚ほども聴いちゃいました。昔イマイチと感じたアルバムも、50歳になった耳で聴くと、どえらい感動があるかも、などと若干の期待をこめて。

結果、ロックやジャズ系CDは「1回聴いただけで棚に塩漬け」の理由が、かえって腑に落ちました。根本的なところで自分の好みに合ってなかったんですね。20年ぶりに聴いて目からウロコ!の奇跡は起きず、残念ですが、引き続きCD棚で20年眠っていただく運びになりました(あるいは中古CDショップへ放出かな)。

一方、クラシック系CDについては、すべてではありませんが「うわ、こんなに素晴らしい音楽(または演奏)だったのか」と驚愕したディスクがありました。耳、感性、好み、それに使用オーディオが変わったためか、理由は定かではありませんけど、ちょっとした不思議体験でしたね。

良い意味で、最大「落差」を感じたCDは、96年録音、マルク=アンドレ・アムランさんの弾く「スクリャービン ピアノソナタ全集」(ハイペリオン)。もともとスクリャービンの良さがサッパリ分からない私でしたが、15年ぶりに聴きなおし、まじ、どえらく感動しました。アムランさんの超絶技巧演奏を「冷たいメカニック」と偏見を持ってましたが、たとえそれが正しくても、この演奏はスゴイ。ときおりギラッと底光りし、鬼気迫る、というか・・・。ここ15年間、スクリャービンの「交響曲」はけっこう聴いたので、私のスクリャービン・アレルギーが解消されていたのかもね。お、この調子でスカルラッティやシマノフスキの楽曲も克服できるかも??

さて、スクリャービンにまさるとも劣らぬ感動を味わった「ご無沙汰ディスク」はこれ。

マリス・ヤンソンスさん指揮「ショタコーヴィチ交響曲全集(全15曲)」であります。堂々の10枚組だい(←この枚数が聴き手をひるませる、とも言えますが)。

ヤンソンスショスタコ全集.jpg

80年代後半から、00年代前半にかけてEMIから発表された分売ディスクを全集化したものです。この全集のスゴイ点は、オーケストラが楽曲で異なることです。ヤンソンスさんと縁の深いウィーン・フィル(5番)、ベルリン・フィル(1番)、レニングラード・フィル(7番)、ロンドン・フィル(15番)、オスロ・フィル(6番)をはじめ、8つの超一流オーケストラを起用する贅沢三昧な企画であります。(個人的に、アムステルダム・コンセウトヘボウ管がいないのが残念ですが、このオケはハイティンクさんと全集作ってましたしね、その兼ね合いなのでしょう)。

私は、分売中のバラ売りで4枚を購入していましたが、全集(10枚組セット)になったら、性懲りもなく、それも買っちゃうつー無駄な出費っぷり。そのうえ、当時はたいして好きじゃなかったんですから、言葉は悪いですが「金をどぶに捨てたようなもの」ですね、CD収集家の心理とは複雑であります。

ところがどっこいであります。

先日、この全集、CD10枚を聴きなおしたところ・・・いやあ、参った。

これはすごい演奏です。脱帽です!

ショスタコーヴィチの交響曲といえば、「ロシア臭」「ソビエト臭」が漂うベタ演奏が多いなかで、ヤンソンスさんは余計な思い入れを排除し、きっぱりストレートに音を鳴らすんです。

たとえば交響曲7番「レニングラード」。題名からもソビエト・ナショナリズムを想起させる楽曲です。それを題名まんまの、レニングラード・フィルを振って録音しちゃう。おお、こってんこってん演奏・・・と思いきや、音楽自身に語らせるヤンソンスさんの手腕は、余計な政治色など吹き飛ばし「ショスタコーヴィチの二面性」とヤンソンスさんが語った楽曲ツボを、グングンおしてくるわけです。

ヤンソンス写真.jpg

オーケストラ、録音年、録音場所が異なるので、全集を包括する評価は困難ですが(とくに音質のばらつきは気になるところ)、8つの名門オーケストラにやりたい音楽をしっかり伝え、ブレのない全集に仕上げるとは恐るべし!ヤンソンスおじさん!

さらに一部例外を除くと、曲のすみずみに「心」と「歌」、あるいは「叫び」が満ちており、いやまあ、これに感動せず、何に感動しろっていうのよ、とディープに入れ込むワタクシであります。

話が長くなるのでこの辺で止めましょう。いずれにしても、この全集の「再発見」は、私にとっての2012年の大事件であります・・・って、まだ今年は終わってないけど。ちゃんちゃん。


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門前トラビス

To ユキタロウ様、niceありがとうございました!
by 門前トラビス (2012-08-13 05:30) 

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