江戸東京博物館で「世界遺産 ヴェネツィア展」を拝見・・・え?そこがツボなの? [絵画]

両国の江戸東京博物館で「世界遺産 ヴェネツィア展」(12月11日まで開催)を拝見しました。

江戸東京博物館といえば、特徴はなんといっても建物の巨大さ&異様さです。東京ビックサイトに対抗?10年ぶりくらいに来ましたが、改めて「無意味な大きさ」と変身ロボット風のデザインにマイナス感動・・・嗚呼。

ヴェネツィア展2.jpg

ちなみに「ヴェネツィア展」はこの建物内ではなく、1階展示室、建物からみて地下で開催されているのでした。

ヴェネツィア展1.jpgさて、展覧会の内容ですが、正直「うへえ・・・」と思っちゃいましたね。企画としては全然アリで、ワタクシごときが云々できるものではありません。しかし期待とあまりに違った内容で・・・虚を突かれた、とでも言いましょうか。展覧会チラシにはこう書かれています。

「世界遺産『ヴェネツィア』の黄金期~爛熟期まで、至極の芸術作品が前例のない規模でまるごと日本上陸」。

この宣伝文句を、ウソとは申しませんが「至極の芸術作品」とは言い過ぎではないかな?

貨幣、天体観測儀、地図、貴族の服飾品、ガラス工芸、シャンデリア、そして絵画・・・150を超す展示品はヴァリエーション豊富で、全盛期ヴェネツィアの文化レベルを実感はできます。史料的価値は疑うべくもありません。

ただし、芸術と言うには「趣味が悪いなあ・・」と。

高位政治家の肖像画や、金持ちの豪邸を飾った風景画、工芸品・・・これらは芸術というより「装飾」「裕福のステータス」であり、芸術家ではなく、職人(の工房)の手による「商品」といった趣きですもん。話はズレますが、イタリアの絵画って、どうしてビッチリ「塗りたくる」んでしょう?余白の美という概念は、当時のイタリア人には理解不可能なのでしょうか?ヴェネツィア風景画にしても、すっきりした空気感が欲しくなりますね。ご丁寧に小さく描かれた群衆が、工房商品らしく「雑」なのもご愛嬌・・・と言ったところでしょうか。

さて展覧会の目玉は、チラシにもなってるカルパッチョ作「二人の貴婦人」(らしい)。

ヴェネツィア展二人の貴婦人.jpg

「謎多き絵画」なる思わせぶりな能書きが効を奏したか、作品の前に沢山の観客が集まってます。私には「エラソーな太ったおばちゃん2人が、ヒマを持て余している図」にしか見えませんけど。ま、高尚な「お芸術」は、私ごときに理解できないってことでしょう、あははは。

ピエトロ・ロンギと彼の工房が描いた貴族画もしかり。18世紀のヴェネツィア貴族は、マスク着用で夜会に参加するのが流行らしいですが(下図)、「そりゃあ、大乱交パーティか?」くらいのツッコミしか出ません。ジョルジュ・バタイユさんなら、この絵に対し「後ろのマスクの人物は、前の人物のケツをなでている。いや結合している!」と断言したかも?

ヴェネツィア展ロンギ.jpg

展覧会の名誉のため(?)申し上げますと、素晴らしい絵画作品名も展示されていました。なぜそれを強調しない?その絵画とは

ジョヴァンニ・ベッリーニ作「聖母子」(1470年頃)。

ジョバンニベッリーニ.jpg

なんという素晴らしさでしょう!

ごたごたした18世紀風俗画のあとで、心があらわれる思いです。構図もすばらしく、繊細な線描に息をのみます。静謐な画面から湧きあがる「精神性」・・・スゴイ。この絵の前はガラガラなので、気兼ねなく思う存分、20分は見とれました。

「ヴェネツィア提督レオナルド・ロレダンの肖像」は、「ふたりの貴婦人」を描いたカルパッチョ作(かな?)、衣装の細密描写が素晴らしいです。

ロレダン肖像2.jpg

ただし(と、またケチをつけるワタクシ)、「ロレダン提督の肖像」といえば、この展覧会では展示されていませんが、あまりに有名なベッリーニの名作(下図)が思い浮かびますので、分が悪い。

ロレダン肖像.jpg

話がややこしいですが、前述のベッリーニ「聖母子」のすぐ脇に、ベッリーニ作ではない「ロレダンの肖像」がかかっている・・・のは、なんだか皮肉ですねえ。

未見の方にネガティブな刷り込みしたかもしれませんが、「芸術作品を観よう」とは思わずに、ヴェネツィア文化を味わおう、くらいのスタンスでのぞめば、楽しめる展覧会です。まずは江戸東京博物館へ行きましょう!・・・って、けなしたような、勧めているような。変ですか、オレ?

ヴェネツィア展4.jpg

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コメント 2

goro

 今,江戸東京博物館では,ヴェネツィア展なんですね。11月に上京したとき,ゴヤしか頭になかったです。次回は,名古屋だそうですから・・まず安心です。そう言えば「芸術新潮」11月号の特集がヴェネツィアだったのに,バカですねぇ。気がつかなかったです。
 カルパッチョの「二人の貴婦人」,インパクトありますね。確か2,30年前は,「・・娼婦」だったと思いますけど,解釈が変わったのですね。
 ベッリーニは,ほとんど知らなかったです。ヴェネツィア派は,ジョルジョーネ,ティツィアーノ,ティントレットくらいしか知りませんでした。ティツィアーノはお好きですか?もしかしてあまり・・・?
 以前,職場の親睦旅行で,昼間,目黒の寄生虫博物館,夜は屋形舟で宴会,サナダ虫で盛り上がり,翌日,江戸東京博物館へ,一階の広場で,全員散らばりめいめい勝手なポーズで記念撮影,駅前の居酒屋で昼食・・・楽しい日々でした。ははは
 門前トラビスさん・・記事楽しみにしてます。では
 
by goro (2011-11-27 23:04) 

門前トラビス

To goro様、コメントありがとうございます。
ヴェネツィア展では、ティントレットの作品もあったようですが・・・すいません、すっかり記憶から抜けてしまいました。
カルパッチョの「二人の娼婦」が、いつのまに「貴婦人」に格上げされたのか?と私も現場で驚いた次第ですが、企画側の強調ポイントは、この絵が切断された一部で、当作品の上部分はある偶然で発見され、左サイドが未発見・・・という点でした。徳川の埋蔵金かよ?だからどうしたのよ、というツッコミしかでなかった私ですが。。。
イタリア方面は土地がらでしょうか、絵画が全体「明るい」ですね、そこが苦手理由かもしれません。私は北方(ベルギー、フランドル)の暗く渋い作風に心惹かれますので。

目黒の寄生虫博物館は良いですよね~。あの動物の内臓に、うじゃうじゃ細かい糸みたいな虫がくっている様子は「ギャッ!」となりますね。
古色蒼然まではいきませんが、ちょっと前時代的な雰囲気もステキであります。
24時間営業の居酒屋も豊富ですので、東京で飲みまくるのは楽しいですね!
by 門前トラビス (2011-12-03 06:26) 

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