感動のショパン。完全にはまったルイ・ロルティの弾く「エチュード」。 [クラシック音楽]

2009年7月。最近、iPodでへヴィローテーションしているクラシック・アルバムは、20年以上前に録音されたこちら、であります。

ショパン「エチュード 作品10、作品25」全曲、LOUIS LORTIE(ピアノ) 

ルイ・ローティ.jpg

私はショパンのピアノ曲がちょっと苦手でして、CDはそれなり保有しているものの頻繁には聴きません。このアルバムも積極的に購入したわけではなく、CHANDOS(英国のCDレーベル)30周年記念ボックスセットを購入したら、その中の1枚で、たまたま入っていたのですね。

LOUIS LORTIE(ルイ・ロルティ)というピアニストのことも全く知りませんでした。くだんのボックスセットのCDをかたっぱしからiPodに録音して通勤中に聴いておったら、この「エチュード」が始まったとき、ハッ!として読んでいた本を閉じ、眼をつぶって演奏に聴き入ってしまったのでした。

今までに聴いたことにないショパンだ。音楽が、素直に心に響く、というのでしょうか。。。ピアニストのテクニックが特段すごいわけでなく、音色やフレージングに特色があるでもない。演奏はむしろ「普通」というか「自然」というか・・・良い意味でピアニストの存在が希薄なのです。

誤解を恐れずにいえばそれゆえ”ショパンそのもの”なんですショパンのエチュード、ってこんなに素晴らしい楽曲だったのか!と目からウロコ的に感動してしまいました。

ワタクシ、写真家の土門拳さんの以下の言葉を思い出しました。「あらゆる芸術がそうであるように、芸術の最高の段階は、手段を忘れしめるところにある。つまり写真が写真であることを、見る人に忘れしめるところにある。」(肖像写真について、1953年)

土門拳さんのお言葉を借りれば、ルイ・ロルティさんの弾くショパンは”ピアノの存在を忘れしめる演奏”と感じる次第。「手段としてのピアノ」が聞こえず、音楽そのものがそこにある・・・と。

YouTubeに、ローティの弾くエチュードが2曲アップされていましたので、興味があれば聴いてください。皆さんは私とは違う印象を持つかもしれませんが、そこが音楽の良さですね。

ショパン エチュード 作品10 第2番 → ここをクリック

ショパン エチュード 作品10 第9番 → ここをクリック

にわかロルティ・ファンになったワタクシ、amazonでロルティさんの他のCD、ショパン(プレリュード)、リスト、シューマン、の3枚を購入し、現在、わくわくしながら届くのを待っています。

ルイ・ローティ1.jpgルイ・ロルティさんのことを調べてみました。CHANDOSレーベルから、既に30枚近いCDを出しており、レパートリーはベートーヴェン、モーツアルト、ラヴェル、リスト、ガーシュインと、めちゃ幅広い。1959年生まれですから、50代の中堅といったところ。何度か来日もしているそうです。

ロルティさんを有名にしたエピソードは、コンサートをキャンセルしたポリーニの代役だそうです。圧巻は、2004年4月、マルタ・アルゲリチが気管支炎でNYのカーネギーホールのコンサートをキャンセルしたとき。

同日PM8時から別リサイタルのため、たまたまNYにいたロルティさんに白羽の矢がたち、たった24時間の準備時間でアルゲリチの代わりに、シューマンの協奏曲を弾いたそうです。それが、あまりにエキサイティングな演奏で観客は大熱狂だったとか。

シューマンを弾き終わったロルティさん、すぐ、もともと予定のリサイタル会場に移動して演奏をこなし、翌日は、また代役でシューマンの協奏曲・・・・演奏の素晴らしさとともに、彼のタフさも話題になったそうです(そりゃそうだね)。

情報があふれる現代であっても、いや情報があふれているからこそ、聴き手それぞれの琴線に触れる演奏(CD)に出会うのは容易ではない、と言えましょう。もし、今回、ロルティさんのCDに遭遇しなかったら、私のショパン(とエチュード)への印象は今と違ったまま、一生を終えていたでしょう。楽曲の素晴らしさを認識させてくれた”ステキな偶然”に感謝するとともに、これからは先入観を捨て、積極的に様々な演奏/音楽を聴こう!と改めて思った次第であります。チャンチャン!!


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Cecilia

彼のショパンを聴いて記事を書いていますのでTBさせていただきました。
よろしければ承認してください。
実は彼の前にフレディ・ケンプを聴いていて、そちらにはまった後だったので印象が薄くなってしまいましたが、彼の演奏もなかなか素敵だと思いました。
TBさせていただいた記事の前後はNMLでショパンを聴きまくった特集みたいになっています。
その年の秋にもやはり聴きまくって記事を書きました。

こちらの記事を拝見させていただき、また聴きたくなってきました。
by Cecilia (2009-07-28 20:16) 

門前トラビス

To Cecilia様、コメント&niceありがとうございます。

TBの記事も拝見いたしました。2年前にすでにロイさんをご存じであったとは!さすがですねえ!
ロイ・ルーティ、この「奇をてらわない」演奏、巨匠に持ち上げられることはないのでしょうけど、実にいいのです。
それにしても、エチュードのCDのジャケット、「貧乏学生が、校舎の裏庭で撮影しました」みたいな、だっさーいセーター姿はなんなんだ!
「素」にもほどがあるだろうって!と音楽以外に突っ込む私です。

フレディ・ケンプはショパンは聴いたことがありませんが、彼も良いですよね~~。ロイ・ルーティとは違う意味での、センスの良さと独特の「個性」がありますよね(好き嫌いは分かれるか?)。

話は変わりますが、雑誌「音楽の友」の8月号(現在発売中)を、眺めていたら、ピアニスト特集が組まれていました。
たくさんの邦人ピアニストに、同じ3つの質問をする、という企画ですが、質問のひとつが「あなたの理想とする音は?」でした。

興味津々で、ピアニストたちの回答を読んだのですが、「心に響く音」とか「自分を表現できる音」、「表情や色彩感のある音」・・・・など、意外にフツーというか紋切りなんですねえ、

しかし、私が大好きな若手ピアニストの青柳晋さんの答えは、ツボにはまりました。ロイ・ルーティの演奏にも通じるように思うのですが、青柳さんの「理想とする音」とは、「美音をめざすのは当たり前だが、最終的には楽器を忘れさせてくれる音」だというのです。

うーーん、それですよ!「ピアノの存在を忘れさせる音楽」・・・・自分が青柳さんの演奏に惹かれる理由がやっとわかったぜ・・・などと妙に感心したのでありました。
by 門前トラビス (2009-07-30 00:12) 

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