突然ですが、大好きなジャック・プレヴェールの詩であります。二度目の掲載はご勘弁を。 [本]

先日。過去にない展開で、酒場で「詩」が話題になったのです。同席キコクシジョ女性が、驚いたことにランボー(シルベスター・スタローンではなく詩人)の詩をフランス語でそらんじたうえに、彼女なりの和訳バージョンまでご披露する国際派ぶりを発揮。

非グローバルで日本ドメステッ子なワタクシ、ここで中原中也や谷川俊太郎さんの詩で対抗すればカッコよかったでしょうが、ブンガク素養のないうらみで、どの詩もうろ覚え。到底、勝てっこないわ(勝ち負けかよ!)。こんな不測の事態に備え、ウイリアム・ブレイクかポール・エリュアールの詩くらいは、脳内に仕込んでおかねばなるまいナア・・・。

さて、その件がきっかけ、とまで申しませんが、本日はワタクシが愛する詩を紹介です。実はこの詩、8年前にもブログにアップしており、二番煎じどころか、まんま前回記事のコピペですわ。ははは。しかし好きなものは好きなんだ。

ジャック・プレヴェールの「セーヌ通り」です。この詩には切実なドラマがある、と思う。もちろんダンテやバイロンのドラマ性はなく、もっと卑近で、だが、それゆえにリアルで映画的です。こうゆう詩が好きなのです。そうか、ジャック・プレヴェールさんは映画の脚本家でもあったのでした。

余計な説明は、そろそろやめましょう、以下がその詩であります。


セーヌ通り 

       ジャック・プレヴェール作/小笠原豊樹訳

セーヌ通り

午後十時半

別の通りとの交差点

ひとりの男がよろめく・・・・・若い男だ

帽子と

レインコート

ひとりの女が男をゆすぶる・・・・・

ゆすぶって

話しかける

男はじぶんの頭をゆすぶる

帽子はひんまがり

女の帽子もうしろへずり落ちそう

二人とも真っ青

男は明らかに立ち去りたいのだ

消えたい・・・・・死にたい・・・・・

だが女は生きたいと烈しく願う

その声

ささやく声が

いやでも聞こえる

それは哀願・・・・・・

命令・・・・・・

悲鳴・・・・・・

一心不乱の声・・・・・・

悲しい声・・・・・・

いのちの声・・・・・・

冬の墓地の

墓石の上で震える病気の赤ん坊・・・・・・

ドアに指を挟まれた人の悲鳴・・・・・・

唄の文句

いつも同じ文句

繰り返される

文句・・・・・・

とめどなく

返事もなく・・・・・・

男は目を向ける 女を見つめる

溺れる人のような

腕のしぐさ

すると文句が戻ってくる

セーヌ通り 別の通りとの交差点

女はつづける

あきもせず・・・・・

包帯で包めない傷

不安な質問をつづける

ピエールほんとのこと言って

ピエールほんとのこと言って

わたしすべてを知りたいの

ほんとのこと言って・・・・・・

女の帽子が落ちる

ピエールわたしすべてを知りたいの

ほんとのこと言って・・・・・・

愚かな質問だ 気高い質問だ

ピエールはどう答えたらいいかわからない

途方に暮れる

ピエールというこの男・・・・・・

笑顔をつくる じぶんではやさしい笑顔のつもり

そして繰り返す

なあ 落着けよ どうかしてるぜ

だがうまく言えたかどうか心許ない

男には見えない

見ることができない

微笑にひきつれた自分の唇・・・・・・

男は息が詰まる

世界がのしかかってきて

息を詰まらせる

男は囚人だ

いろんな約束に追いつめられた囚人・・・・・・

世界は清算を迫ってくる・・・・・・

男の正面にいるのは・・・・・・

機械だ 計算する機械

機械だ 恋文を書く機械

機械だ 苦悩する機械

それが男を捕え・・・・・・

男にしがみつく・・・・・・

ピエールほんとのこと言って。


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