名指揮者 コリン・デイヴィスさんが死去。名盤のいくつかを聴きながら。 [クラシック音楽]

今年(2013年)4月14日、イギリスの名指揮者コリン・デイヴィスさんが85歳で逝去されました。高齢とはいえ、昨年まで現役でロンドン交響楽団を指揮されてましたから、訃報に驚きました。

今年前半は、ドイツの指揮者ヴォルフガング・サバリッシュさんが89歳で、フランスの指揮者ジャン・フランソワ・パイヤールさんが85歳で亡くなっています。演奏家ではオルガニストのマリー・クレール・アランさん、チェリストのヤーノシュ・シュタルケルさんと巨星が相次いで鬼籍に入りました。私がクラシック音楽を聴き始めた40年前時点で、すでに名匠とうたわれていた方々。ご冥福をお祈りします。

さて今日は、故コリン・デイヴィスさんの演奏CDについて書きたいと思います。

指揮者歴53年、「サー」の称号を持つマエストロは実直、堅実、温厚、誠実、謙虚といった形容詞で語られる人格者だった(らしい)。しかし渋めの響きのシュターツカペレ・ドレスデン(ドイツの老舗オケ)との録音が「いぶし銀の」と評されると、まるでコリン・デイヴィスさんの指揮が「保守的で面白みがない=地味、堅い」と誤解された感があります。少なくともアグレッシヴに派手な演奏をする指揮者とは見做されていなかったでしょう。

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ロンドン交響楽団、シュターツカペレ・ドレスデン、アムステルダム・コンセルトヘボウ、ボストン交響楽団など名だたるオーケストラと録音を重ねたディヴィスさん。私の保有CDはごく一部ですが今回、いくつかを聴きなおし、演奏の素晴らしさに改めて感動するとともに一般評価のイイカゲンに呆れた次第です。

話は逸れますが「自称クラシック音楽ファン」なる連中の多くは(私も含め)権威主義的ですね。エライ評論家センセイが右と言えば右、左と言えば左・・・てな調子で、ようするに付和雷同。定着した評価(偏見)に疑いもせず迎合してしまう。自分の耳で聴き自分の頭で考えたの?とツッコミたくなる「従順」っぷりには苦笑いもしばしばです。いわく「カラヤンの演奏は表面的で魂がない」「アーノンクールの演奏は即物的である」「ベートーヴェンの9番はフルトヴェングラーの右に出るものはない」。あげくに、この演奏家にはこの曲が合ってる・合ってないと決めつけ、悦に入るから始末が悪い。

ま、クラシックに限らず、どの音楽ジャンルでも、聴き手を納得させる方便に、「とりあえずそう言っとけば間違いないレッテル」を貼りたがりますけどね。

何を言いたいかというと、コリン・デイヴィスさんの演奏のことです。「温厚」「堅実」「地味」「渋い」という世間評価は、彼の芸術の何もあらわしていません。むしろ正反対とさえ思えます。お得意のシベリウスの交響曲(全集を3回録音)を聴けば、そこに広がるのは、地味や温厚などではなく、楽曲の本質に迫ろうとする「情熱」なんですね。

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指揮者の楽曲への共感があまりにツボにはまっていて、見事とか、美しい、のレベルを越えたシベリウスの曲(の神髄)まんまがどおーーんと示されるわけです。演奏という「手段」を超越した曲そのものの感動に満ちているんですね。この凄さを、いったいどうするのよ、ってなもんです。もちろんコリン・デイヴィスさんの録音のすべてが完璧ではありませんが、ロンドン交響楽団とのシベリウス交響曲全集(RCAレーベル、録音1990年代)は間違いなく、神の領域に達した名盤であります。

繰り返しますが、温厚・堅実・地味どころか、コリン・デイヴィスさんの演奏は「情熱的」なんです。若手指揮者ドゥダメルさんのような、無駄に元気ハツラツの分かりやすい情熱ではなく、曲の深みに達しようとする情熱なんです・・・おおっとハナシが抽象的になってきたので最後にこれぞ!というお奨めディスクを紹介して終わりにしましょう。

コリン・デイヴィスさん指揮、シュターツカペレ・ドレスデン、ライプツィヒ放送合唱団、ソプラノはルチア・ポップさんという布陣で奏される、

フォーレ「レクイエム」(1984年録音)であります。

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この演奏さえ「いぶし銀」と形容するヤツがいるんでしょうか?悲しみに沈むだけでは死者は浮かばれないよ、と言いたげな光と希望に満ちたレクイエム(鎮魂歌)です。溶け合う合唱、それを優しく包み込むオーケストラの音色、何度聴いても、じーん、ときちゃいます。とくにOffertoriumの後半から、Sanctus、そしてPie Jesuへ継がれる箇所のくらっとくる美しさといったら・・・。コリン・デイヴィスさんのご冥福を、彼の演奏で祈るのは悲しいですが、本当にこのディスクは素晴らしいと思います。

蛇足でありますがコリン・デイヴィスさんのお写真を拝見すると、つい俳優のイアン・ホルムさんを連想しちゃうんです。下写真の左がディヴィスさん、右がホルムさん。似てませんかね?ところで映画「エイリアン」のイアン・ホルムさんは怖かったですよねえ、ほんと、急に暴れないでくださいよ。って、なんのこっちゃ。

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