思わせぶりな映画、ベストワンは「ポゼッション」だと思う、という話。 [映画]

先日のこと。映画マニアの同僚と久しぶりに飯を食いました。ご存じのように(ご存じじゃない?)、私も、年間に100~150本の封切映画を見たこともあった自称「映画男」ですから、当然、話題は「映画」になりますね~~。

最初は「最近観た面白い映画は何?」でしたが、いつのまにやらマニアック方向に走るのが共通趣味どうしの会話。われわれ二人がいきついて、はまったテーマは、

思わせぶりに、意味があるようで、実はただの駄作

といえば、どんな映画だろうか?です。

はい!まず思い浮かんだのが、最近(といっても昨年)観た「リミッツ・オブ・コントロール」。これはスゴかったっす!謎の主人公の、謎の言動、謎の結末、つーより、この映画を作ったこと自体が大きな謎だろ!って。

マニアック同僚が挙げたのはジャン・リュック・ゴダールの映画全般・・・それもたしかにスゴイ。となると、私は名匠アンドレイ・タルコフスキーの「鏡」「ノスタルジア」でどうだい!対してヤツは、ドイツ映画「ブリキの太鼓」。負けじと私は「存在の耐えられない軽さ」。ヤツは禁じ手ともいえるルイス・ブニュエル監督「ブルジョワジーの密かな楽しみ」。こうなったら、奥の手、アラン・レネ監督「去年マリエンバートで」・・・と、とどまるところを知らぬ、負のカウンターパンチ連発だい(上記映画のファンの方、すいません)。

そんな調子で対抗心を燃やす二人が、それはビンゴ!と、ついに意見の一致をみた作品が出ました。究極の「思わせぶり映画」、それは・・・ 

ポゼッションP.jpg

ポゼッションであります。

1980年の西ドイツ、フランス合作映画。ポーランドのアンジェイ・ズラウスキー監督の力作(?)で、カンヌ映画祭のパルム・ドール(最高賞)にノミネート、主演イザベル・アジャーニは最優秀主演女優賞を獲得した、つまり、世間的には「名作」の”お墨付き”がついているのです。

ポゼッション=憑依(ひょうい)の題名どおり、イザベル・アジャーニ演じる若妻が、精神を病み、自らの妄想で生みだした男性に欲情・耽溺するうち、彼女の夫まで狂っていく・・・精神の暗部と葛藤をテーマにした作品なんです。

ま、哲学的ホラー・サスペンス、といったところでしょうか。

たしかに、当時、飛ぶ鳥落とす勢いだった美人女優イザベル・アジャーニが狂女を演じたことは驚きであり、インパクトは絶大、さらにエキセントリックな濡れ場に挑んだ彼女の「勇気」は認めるものの、映画はずばり、スットコドッコイでしてね・・・・。どう深読みしたら、一部批評家のいう「ポーランドの歴史が見てとれる」のか?サッパリわかりません~~。

これぞ、見る側の深読み気分を誘発し、誤解のうえに成立した、正真正銘「思わせぶり駄作No1」といって良いでしょう。その意味では必見作ともいえるか!

ローズマリーの赤ちゃん.jpgちなみに、ポゼッションとは内容異なりますが、じっとり思わせぶり~な雰囲気が似ている「ローズマリーの赤ちゃん」のほうは、本当に怖かったです。

主演ミア・ファローの絶叫演技もすごいが、この、イヤ~~な空気は一級です。駄作ではなく名作と言っておきましょう。この作品を名作とすることは、件の映画マニア同僚と私で、意見が一致しておりますね(だから、何なんだ?と言われると困るけど)。

皆様の、「思わせぶり駄作映画」のNo1、といったら、いったい何でしょうか?

「北京原人WHO ARE YOU」はやめましょう、ね?


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ふくずみ

門前様、ポゼッション、と来ましたか。
ストライクゾーンめいっぱい、ど真ん中なご意見です。
まったく同感です、わけのわかんないにもほどがある映画ですね。
イザベル・アジャーニも、ただただ、なんだか分からない人になってました。
門前様の記事で題名を見るまで、20年以上、この映画のことを、思い出しもしませんでした。さすが、すごい引き出しをお持ちの門前様。

「去年マリエンバートで」を書かれているので、ヌーベル・ヴァーグつながりで思い出したのですが、エリック・ロメールの映画、思わせぶりな駄作のうえに、長い、という三重苦ではないでしょうか。
by ふくずみ (2010-04-27 00:15) 

門前トラビス

To ふくずみ様、コメントありがとうございます。
うひゃーーーいましたか、ポゼッションを知っている奇特な御仁が!
当時のイザベル・アジャーニも、考えようによってはどの作品も、変、なのでありまして。「アデル」や「カミーユ・クローデル」でエキセントリックな芸風に磨きをかけ、「殺意の夏」になってくると、正直かなりイタイし、80年代後半の「サブウエイ」ではツッコムもボケるも困難な状態。
うーーん、70年代、80年代の映画小僧(私のことです)のアイコンだったのはなぜだろう?
ちなみに当時ワタクシが大好きだった女優さんといえば、リン・フレデリック、パメラ・フランクリン、ラウラ・アントネッリ、ジャクリーン・ビセットと、あはは、マニアックな懐かし話で失礼しました。

エリック・ロメール!!
うひゃあ、クレールの膝、あちゃーー。何かが起きそうで、何も起きない、でも時間だけは経過していくという、宇宙へワープ!メビウスの輪!
お見事です。感服しました。
ちなみに、危険な発言ですが、フェリーニの映画(特に後期)って、けっこう「思わせぶり」が入ってませんかね?
by 門前トラビス (2010-04-29 09:41) 

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