引き続きマーラーの2番。素人指揮者ギルバート・キャプランさん、ガンバレ!! [クラシック音楽]

前回、マーラーの交響曲2番「復活」を取り上げましたが、今日は私が保有する同曲CD(16種)の変わりタネ(キワモノ?)をご紹介します。小難しい話ではなく、ちょっと夢のあるお話なんです。

ギルバート・キャプランというオジサンが主役です。この方、音楽家ではなく、経済雑誌の編集者でした。60年代か70年代のある日、奥さまと入ったレストランでたまたまマーラーの交響曲2番「復活」を耳にした彼は、大感激してしまうんですね。曲に惚れこみ楽譜を暗譜、さらには一念発起し、プロ指揮者から個人レッスンを受けたのです。

プロ指揮者を目指すつもりはなく、あくまで「マーラーの2番を指揮したい」という夢を抱くシロートさんだった。この曲だけを、というピンポイントな熱意がステキです。私もこの曲をこよなく愛しているので、キャプランおじさんのお気持ちがよく分かりますよ(さすがに指揮までしようとは思わないが・・・)。

マーラー「復活」には聴く者の人生を左右するデーモ二ッシュな魅力があるんですなあ。

mah1.jpg話をキャプランさんに戻します。すごいのはここからなのです。練習成果を披露すべく、自費でプロオケを雇ってコンサートを開催しちゃうのです。それが評判を呼び(?)80年代前半に、ロンドン、日本などで公演を行う。さらに87年には名門ロンドン交響楽団を指揮したCDまでリリースするのです(左写真)。ジャケ写真の陶酔しきったキャプランさんのご様子に、嬉しくなりますねえ。ちなみに、このジャケ写真、あまりにもダサイと判断したのか、現在流通するCDは「ごく普通」の写真になっておりツマラナイです。その意味ではお宝であります。

話が脇道にそれますが、15年ほど前に、私がイギリスのバーミンガムに出張したとき、有名な市響ホールの年間公演プログラムに、しっかりと「G・キャプラン指揮」の記載をみつけてビックリしました。当然ですが、演奏曲はマーラー2番「復活」!オケは一流、フィルハーモニア管でしたね。やるなあ。

そして、そして、このオジサン、数年前ついに世界一のオケと称されるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したCDまで出したのです。おおお、やるわあ!

プロ指揮者ですら録音どころか指揮台にも立てないウィーン・フィルを相手に、一介のクラシック好きのオジサンがCDまで出してしまう凄さ。音楽家として頂点に登りつめた、とさえいえる快挙です。で、このCDの内容(演奏)ですが、音楽云々ではなく、彼の「復活」への熱い思いが伝わる快作に仕上がっています。

mah2.jpg

世間によくいう「努力すれば、夢はかなう」という言葉、ひねくれ者の私は「あほか」と斜めに見るのですが、キャプランさんのシンデレラ・ストーリーをみると、あながちこの言葉も間違っていないかも・・・・とプチ反省しちゃいました。きっと、今日も、キャプランおじさんは世界のどこかのホールで活躍されていることでしょう。

振る曲はただ1曲。マーラーの交響曲2番「復活」。確認してませんが、そうであってほしい。レパートリーを広げず、ストイックに「この1曲の指揮者」でいてほしい。がんばれーーーー素人指揮者、キャプランさん。

今年のマーラー・イヤーに来日公演しないかな?絶対に行くのに、ねえ。


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青兄

大分前に門前トラビスさんからのお勧めがあり、速攻で購入したCDですね。

キャプランさんの指揮、良かったです。大感動を呼び起こす、と言った演奏ではありませんが、聞き終わって心から「あ~、良かった~」と感じられます。

週末は何かと用事があったりで落ち着かないので、また来週の平日に誰の気兼ねもなく、大音量で、いや、彼の場合はあまり音が大きい必要はないかも、まあ、じっくりと一人でもう一度聞いてみようと思います。

良いCDを教えて頂いて感謝、です。キャプランさん来日したら絶対に聞きに行きたいですね。来ないだろうなあ。。。。
by 青兄 (2010-01-16 21:42) 

門前トラビス

To xml_xsl様、nice、ありがとうございました!
by 門前トラビス (2010-01-17 12:09) 

門前トラビス

To 青兄様、コメントありがとうございます。
実は私のマニアックコレクションの目玉は、キャプランさんが、VPOを振ったほうではなく、LSOを振った1987年盤なので、画像を追加しておきました。うーん、完全に陶酔状態で指揮していますねえ~。

LSO、VPOのどちらの盤にも言えることですが、キャプランさんの指揮の良いところは、さすがにこの曲に入れ込んでいるだけあって、素人的に「ツボ」を押さえてくるところですね。
とくにLSOとの盤では、自分が指揮者だったら、たぶんこうするだろうなあ、というポイントを、ちょっと誇張気味にやってくれるので、本当にうれしくなります。第一楽章の、全休止から弦の入りの箇所は、前半のハイライトのひとつだと思うのですが、キャプランさんの解釈をとっていたのは、クレンペラーくらいではないかと思います。

また、CDの楽曲解説まで自分で書いてしまう、この入れ込みといったら。

そして、今では当たり前になっていますが、CD2枚組の、1枚目は第一楽章だけを収録し、2枚目に第二楽章以降を入れるのも、マーラーの「第一楽章のあとに休憩時間を取るように」との指示を忠実に守ったもので、こうした、アマチュアならではのこだわりが、すごくうれしくなってしまうのです。

20年以上前、このCDを買ったことで、私もマーラー2番「復活」に入れ込んでしまった面もあり、キャプランさんは私にとっての「師匠」でもありますね。

本当に、来日公演をしてほしいものです。
アマチュアの強み、ではありませんが、たぶん、プロ指揮者にはできない盛り上げ方をしてくれるでしょうから・・・
by 門前トラビス (2010-01-17 12:20) 

Lotta

こんばんは!
キャプランさんのこと、全然知らなかったのですが、門前トラビスさんのおかげで興味がわいてきてちょっと検索してみました。
残念ながら(?)、5番のアダージェットも、ロンドン交響楽団と録音されているようです。


by Lotta (2010-01-23 00:58) 

門前トラビス

To Lotta様、コメントありがとうございます!
おお、偶然ですね、昨日、秋葉原の石丸電気クラシック館で、輸入クラシック売り場を物色していたところ、キャプランさん指揮の、ロンドン交響楽団のCDを見つけました。
お店のつけた帯に隠れて、録音年が読み取れなかったのですが、どうも私の持っているCD(ブログの最初の写真)と、現在発売されているCDは、どちらも同じオケLSOを振っているのですが、違う音源のようなのです。

もちろん、私の持っている「陶酔するキャプランおじさん」ジャケのCDには、「復活」しか収録されていません。これは要調査ですね。

とはいえ、「復活」一本!の心意気がステキだったのに、ちゃっかり、5番のアダージェットなどというベタな楽章を振り、かつCDにカップリングするとは、とんだ食わせ者ですな、このオヤジ。
まさか、こっそり、6番「悲劇的」あたりを練習しているんじゃないでしょうね~~。ちょっと心配になってきましたよ。
by 門前トラビス (2010-01-23 11:05) 

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