レインボーの名盤「アイ・サレンダー」(1981年)・・・ってそのアルバムタイトルはダメでしょ! [ジャズ、ロック、ポップス]

2020年1月11日。

北海道旅を終え関東に戻ったワタクシ。土産に買ったフルールブラン(苫小牧)の「北海道ラスク」をいただきながら、録りためたTV番組を再生。猫を撫でつつぼんやり観ておったのです。

年末放映のBS12「ザ・カセットテープ・ミュージック」を拝見したところ、80年代ロックの特集をやっておりました。MCのマキタスポーツさんか、スージー鈴木さんのどちらかが、お薦め(?)曲として、こんなんを選んだのであります。

レインボー「Spotlight Kid」!

どはあ~~~と声が出た勢いで、ワタクシの口から北海道ラスクの破片が飛び出しました。以下、完全マニアックなハードロックネタになっちゃいますけど、元気に書きます。

「スポットライト・キッド」(←丁寧にカタカナ表記)とは、1981年にリリースされたレインボーのアルバム「アイ・サレンダー」(←ここもカタカナ表記)の収録曲であり、たしかに名曲でございます。

BIS_OGAWA_03.jpg
ただし、ベタな洋楽好き野郎が、当アルバムから1曲を選ぶとすれば、10人中9人はアルバムタイトル曲でもある「I surrender」となりましょう、そりゃそうでしょう、このアルバム、

ジョー・リン・ターナーがレインボーのアルバムで、初めてヴォーカルをとり、I surrender、は彼の名唱あってこそいまだ歌い継がれるモニュメンタルなロック・アンセムになったのですから。いや、もちろん、リッチー・ブラックモアギタープレーはスゴイわけで、Spotlight Kid、つう曲はリッチーのギター + ドン・エイリーのキーボード(オルガン?)の、からみ、つうか、あうんの呼吸、つうか、妙技が素晴らしいく、決して否定はしないのですが・・・ネ。

コーフンして文章がめちゃくちゃになりましたが、この問題を小さく考察するに、レインボーの音楽をどの切り口でとらえるか?でお好み曲が違ってくる、というハナシなんでしょうナ(←分かったふりして上から目線)。

バンドリーダーたるギタリスト、リッチー・ブラックモアのリフと超絶プレーをメインに置けば→ Spotlight Kid、となり、いや、やっぱり音楽は「歌」でしょうよ、と、ジョー・リン・ターナーの歌唱を満喫するなら→I surrender、とまあ、こーゆー着地点でよろしいでしょうかね、先生。

で、ワタクシ。ここで、ある事に気づいたのです、つうか80年代ロック好きなら誰もが思ったでしょう、さんざん今語ってきた1981年のレインボーのアルバム「アイ・サレンダー」。それが、ですよ(←宮崎弁)、このアルバムタイトルって日本だけで通用する、いわゆる邦題ですよね。上写真を見りゃ分かりますけど、オリジナルのアルバムタイトルは、

Difficult to Cure (治療不能)、

であります。どうしてこうなったか、つうと、想像に難くなく、「治療不能」なんて辛気臭いタイトルより、日本人受けする(であろう)最初のシングルカット曲「I surrender」を前面に出したほうが売りやすい、つう販売会社的な発想ですね。ま、当時の日本で洋楽アルバムといえば、勝手な思惑で、オリジナルタイトルにカケラも無いタームをまぶした邦題を掲げたわけでして、たとえばKISSのアルバムタイトルには「地獄の〇〇」、AC/DCなら「悪魔の〇〇」とくる。スティーヴン・セガールの主演映画がすべて「沈黙の〇〇」になるがごとし。まあ、そんなもんだ、目くじら立てるハナシでも無し・・・と納得しちゃう日本人たち。

しかし!

あえて話を蒸し返したい。KISSのアルバム「Destroyer」の邦題が「地獄の軍団」なのは許しましょう。AC/DCのアルバム「For Those About to Rock We Salute You」の邦題が「悪魔の招待状」なのも許しましょう。

だが、レインボーの「Difficult to Cure」のアルバムタイトルが「I surrender」はいかん、と思う。それは、なぜか。

理由は簡単です。このアルバムに、Difficult to Cureというタイトルの「曲」が収録されているから。バンドが(あるいはマネージメントが)特定の収録曲のタイトルをアルバムタイトルに冠したのは、その曲こそが製作当時のバンドの姿を一番端的にあらわしている、ようするに、俺(たち)のやりたい音楽はこれなんじゃ、つう表明なんであります。

にもかかわらず「別の」曲=I surrender、をアルバムタイトルに付け換える、つうのは、いくら極東ジャパンでの所業といえど邪道じゃんか。もし同じことを現在(2020年)やったら、リッチーは許しても、キャンデス・ナイトが絶対に許さないですぜ(話をややこしくしてスイマセン)。そんなこた、どうでもいいじゃん、その邦題で日本でアルバムがバンバン売れればさ、つう声もありましょうが、アナタ、Difficult to Cure、という曲を聴いてますか?と問いたい。

アルバムの最後に位置するこの曲は、ベートーヴェンの交響曲9番「合唱」の、最終楽章いわゆる「歓喜の歌」をロックアレンジしたものなんですね。当然、リッチーがギターをバンバン弾きまくるわけです。「世間がキャッチーな歌ものを求めようと、このギタープレーがオレの身上なんじゃ!」という(当時の)リッチーの声が聞こえるようではありませんか。もっといえば、

主役はオレ(リッチー)であり、あいつ(ジョー)じゃねえ!

と、おっしゃってのであります(断言)。てなわけでアルバムタイトル=「I surrender」はアウト!即日施行でこのアルバムタイトルは「治療不能」となりました・・・って、たしかにイマイチだね、このネーミングも。

さて。

ここまでワタクシが熱弁をふるったのに「オレにとってあのアルバムは、アイ・サレンダー、でしかない!」と言い張る東京都渋谷区幡ヶ谷在住のアナタ、では、これはどう思いますかね。

井上陽水さんのアルバム「氷の世界」のタイトルが「小春おばさん」だったら!?

BIS_OGAWA_04.jpg
宇多田ヒカルさんのアルバム「First Love」のタイトルが「Paint It, Black」だったら?もはやローリング・ストーンズへのトリビュートアルバムですよ。

Acceptのアルバム「Metal Heart」のタイトルが、「Dogs On Leads」だったら?デフ・レパードのアルバム「ヒステリア」のタイトルが「アニマル」だったら?

BIS_OGAWA_05.jpg
マイケル・ジャクソンのアルバム「スリラー」のタイトルが「Human Nature」だったら?

ほらね、そう考えると、レインボーのアルバム「Difficult to Cure」を、I surrenderにしちゃいかん、つうことが、よおおおく、お判りでしょう。

最後にひとつ。I surrender、って言葉の響きはかっこいいけど、surrender(サレンダー)の意味は「屈服する」「服従する」「断念する」といった、めちゃネガティヴなものです。アイ・サレンダー=愛されるんだあ、というダジャレは英語圏で通用するわけも無し。で、日本で「サレンダー」な楽曲といえば、やはりこれ。

細川たかしさんの「心のこり」でしょう。♪ 私ばかよね~おばかさんよね~あきらめが、あきらめが悪いのね~♪という歌詞から、この曲の英語タイトルは、

I never surrender、といたしましょう。

BIS_OGAWA_07.jpg
では本日も、ご安全に

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感